ASDは同じことを繰り返す?~常同行動について~

DSM-5

この記事では、自閉症スペクトラム(以下,ASD)の特性である「常同的で反復的な運動動作や物体の使用,あるいは話し方(常同行動)」についてまとめてます(^ω^)

  • 「常同的で反復的な運動動作や物体の使用,あるいは話し方(以下,常同行動)」ってつまりなに?
  • 具体的例は?
  • 同一性の保持(こだわり)や強い興味との違いは?

↑↑こんな疑問がある方は、ぜひご参考ください(^^)

結論~常同性行動とは?~

それでは結論から(^ω^)

常同行動とは、感覚的・本能的・直感的に繰り返してしまう動作や行動のことだと考えられます。

障害種別の常同行動の分類について研究した佐藤(1983)は常同行動を、「時と場所を選ばずに反復してあらわれ、目的や意味を明確にすることが困難な行動」と定義している。

(引用:常同行動に関する一考察ー知的障害概念と自閉症概念の共通点と相違点をてがかりにしてー,p97,右列,【3.知的障害と自閉症の常同行動】10-17行目)

「目的や意味を明確にすることが困難」

これは、なぜでしょうか?

それは、「感覚的・本能的・直感的」だからだというのが僕の理解です。

その理由については、この記事を読んで頂くとわかりますが、その前に前提の確認です(/・ω・)/

前提~常同行動のASD特性における位置づけ~

そもそも、ASDには大きく2つの特徴があります。

1つは、「社会性の困難」、もう1つが「繰り返される行動」です。

そして、常同行動は、「繰り返される行動」の中の1つです。

さて、全体的な位置づけはご理解いただけたでしょうか?

基準Bについての全体像について詳しく知りたい方は↓↓こちら

であ、以上を踏まえて、常同行動の具体例をみていくことにしましょう(/・ω・)/

常同行動の具体例は?

常同行動の例としては以下のようなものがあげられます。

反復的行動を対象とした研究としては,村本・園山(2011)を挙げることができる。村本らは,頭をたたく,指をくわえる,頭を揺らすといった常同行動をする 1 名の自閉症者に対して,スケジュール表を使用することで余暇スキルを形成し,それに伴って常同行動の減少を試みた。

(引用:自閉症スペクトラム障害における反復的行動の研究動向と課題―支援者の反復的行動への理解に焦点化する意義―,p37【Ⅴ.反復的行動に対する介入方略】5~7行目)

さて、常同行動の具体例がわかったところで、次なる疑問がわいてきます。

それは、「同一性の保持(こだわり)」や「強い興味」との違いは何か?

ということです。

「同一性の保持(こだわり)」や「強い興味」との違い

この答えは、「知的水準」が「高いか低いか」といった点にあるようです。

Turner(1999)によると,反復的行動は,低次の行動(“lower-level”behaviors)と高次の行動(“Higher-level”behaviors)に分類され,前者はステレオタイプ的行動や繰り返しのある物の操作などを含み発達レベルの低さと関連する一方で,後者は物への異常な愛着,強い同一性の保持,限局的興味などを含み高い認知能力を示す自閉症児者にみられることが指摘されている。

(引用:自閉症スペクトラム障害児の反復的行動の変容プロセスの検討,p49,2段落,1-7行目)

つまり、上記の主張を図解すると↓↓こういう話になるかと思われます。

以下の主張も、そのことを裏付けています。

石倉ら(2008)も常同行動とそれ以外を分けて検討しているが,これらの研究で常同行動が分離されているのは,常同行動が自閉症スペクトラム障害児に特有とは言えず,たとえば重度の知的障害児や視覚障害児にも見られるといった質的な差異が存在しているからである(鬼塚,2004)。

(引用:自閉症スペクトラム障害における反復的行動の研究動向と課題―支援者の反復的行動への理解に焦点化する意義―,p33,3段落,6行目~10行目)

以上のことからも、「知的水準」によって「常同行動」は他の2つと区別されているのだと考えられます。

では、最後に「常同行動はなぜ、感覚的・本能的・直感的と言えるのか?」という疑問を分解していくことにしましょう。

そのためは、常同行動の特徴をもう少し詳しく追う必要があります。

先に結論を言っておくと、「知的水準や言語水準の高低」によって、常同行動のすみわけがなされているからです。

常同行動の特徴その①

常同行動が他の反復行動と区別される視点として「知的水準」を挙げましたが、別の表現として「感覚的」という言い回しがあります。

常同行動とそれ以外の行動が異なった機能であると捉える研究は散見されている。常同行動は感覚に関する自己刺激行動であり,それ以外の行動はより高次の認知機能であると捉えられており,前者を「感覚系」,後者を「認知系」として異なった系統であると捉えることの妥当性を示した研究もある(佐々木,2009)

(引用:自閉症スペクトラム障害における反復的行動の研究動向と課題―支援者の反復的行動への理解に焦点化する意義―,p33,最終段落,1行目~4行目)

これが、この記事の冒頭で「常同行動」の定義に「感覚的」という文言を含めた理由です。

また、次のようにも言われています。

前述したように知的障害児の常同行動の要因の一つは「楽しみ」であると思われる。知的障害が重症なほどより感覚的な常同行動が出現し、知能が正常に近いほどより思考的・概念的な常同行動が出現する。より感覚的な常同行動の要因は「楽しみ」であるならば、より思考的・概念的な常同行動の要因は「不安」ではないだろうか。「楽しみ」と「不安」、全く異なる状態で出現する常同行動は知的レベルで分けられるのではないだろうか。

(引用:常同行動に関する一考察ー知的障害概念と自閉症概念の共通点と相違点をてがかりにしてー,p99,左列,3段落,1-9行目)

「楽しみ」にしろ「不安」にしろ、より本能的な感情に根付いているものだと考えられます。

加えて、Kannerは次の様に言っています。

「特に,Kannerは,「強迫性」と「常同性」について,「同一性を保持することへの強迫的な願望(anxiously obsessive desire for the maintenance of sameness)」があり,子ども自身がそれを調整することができないことを指摘している。

(引用:自閉症スペクトラム障害における反復的行動の研究動向と課題―支援者の反復的行動への理解に焦点化する意義―,p32下から3行目~p33,6行目)

そう、常同行動は「自身がそれを調整できない」のです。

このような見解から、常同行動は、「本能的かつ直感的」だと考えられます。

ただ、そうすると、今度は「感覚探求とは、何が違うのか?」という疑問が湧いてくるのですが、これ以上広げてしまうと風呂敷が閉まらなくなるので、その疑問はスルーします(笑)

常同行動の特徴②

常同行動の特徴の2つめは、対象が自己にあるか外界にあるかという点で、行動の種類が違うということです。

「対象物が自己にある常同行動」とは、「徘徊」「目的なしにとびはねる、走る」等であり、「対象物が外界にある常同行動」とは、「目の前で物体を振る、回す」「水道の水を出してみている」「砂、土などをもてあそぶ」等である。

(引用:常同行動に関する一考察ー知的障害概念と自閉症概念の共通点と相違点をてがかりにしてー,p98,左列,6-11行目)

それを図にしたのが以下ですね。

このような細かい理解は、支援をする上ではかなり重要です。

なぜなら、「常同行動=自己刺激」と捉えたときに、「対象物が自己」にある場合はそれを強化子としてコントロールすることは中々難しいです。

一方、対象物が外界にある場合は、他者がコントロールできる可能性が高いです。

故に、機能分析も重要になってきますね。

感覚鈍麻との区別も必要です。

そして、この対象物を自己に求めるか、外界に求めるかは、言語能力ともどうやら関連があるようですね。

言語能力の水準の違いによって常同行動に差異が認められるという春日(1985)は、無言語群は常同行動を自己に求め有言語群は常同行動を外界に求めるという結果を報告した。

(引用:常同行動に関する一考察ー知的障害概念と自閉症概念の共通点と相違点をてがかりにしてー,p98,左列,15-18行目)

誤解をおそれずに、すごくわかりやすくいうと↓↓こういうことかと

  • 言語能力が高い・・・対象を外界に求める常同行動が多い
  • 言語能力が低い・・・対象を自己に求める常同行動が多い

感覚的常同行動に対して、「思考・概念的常同行動」となるものが図解にありますが、これもやはり図知的レベルでわけた区分です。

不適応の反復行動に含まれる常同行動には、感覚的な常同行動と思考的・概念的な常同行動がある。感覚的な常同行動とは視覚や触覚等に刺激がある常同行動である。対象物が自己にある常同行動と対象物が外にある常同行動があり、知的レベルで分けられる。知能正常群に近くなると、同じ考えが何度も浮かんでそれが気になりいろいろなことが制限を受けてしまうといった思考的・概念的な常同行動になる。そしてそれは同一性保持行動や強迫的行動により近い反復行動になると考えられるのである。

(引用:常同行動に関する一考察ー知的障害概念と自閉症概念の共通点と相違点をてがかりにしてー,p99,左列,2段落,1-10行目)

上記の引用を含め、図解を修正すると、「より近い反復行動になると考えられる」とあるので、以下のようなスペクトラム的な理解が適切かもしれません。

では、ここまでの常同行動の特徴②に基づいて、最後に、分類表を作っておきました٩( ”ω” )و

ぜひご参考ください(∩´∀`)∩

このように、常同行動は、「知的水準や言語水準の高低」によってすみわけがなされていることがおかわり頂けたのではないでしょうか?

だから、「常同行動は、感覚的・本能的・直感的な行動」だと考えられるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

常同行動についての理解は深まったでしょうか?(^_^)

それでは最後に、この記事の内容をふりかえってお別れです。

  • 常同行動とは感覚的・本能的・直感的に繰り返してしまう動作や行動のことだと考えられます。
  • 常同行動は、ASD特性の「繰り返される行動」のうちの4つある種類のうちの1つ
  • 常同行動の具体例には、頭をたたく,指をくわえる,頭を揺らすなどがある。
  • 常同行動と、「他の繰り返し行動」との違いは、知的水準の違いである。
  • 常同行動には、対象を自己に求めるものと、外界に求めるものがある。その分類が言語水準の高低によって分類されている。
  • 感覚的常同行動と思考概念的行動の違い、知的水準の違いと関連があると考えられている。

ということなんですね~

それではまた(^^ゞ

参考

臨床心理士資格試験でも「ASD」は出題されています

ということで、臨床心理士試験を受験される方は以下のページも参考にしてみてください!(^^)!

それではまた♪

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