【心理学】Mahler,M.S.(マーラー)の分離-固体化理論とは?

発達理論

この記事では、Mahler,M.S.(マーラー)の分離・固体化理論についてまとめています。

内容についての理解を深めたいけど、ゆっくり勉強してる時間がない

こんな方はぜひ、ご覧ください(^^♪

6つの論文に目を通して情報を集約しました。

結論~分離-固体化理論とは?

分離個体化とは、子どもが一人の人間として成長していく心のプロセスのことだと考えられます。

「分離個体化の概念は,Mahler(1975)が乳幼児の発達過程について用いた概念であり,乳幼児が母親との未分化な存在から一個の独立した個人として誕生するまでの精神内的過程である.言い換えれば,幼児が母親表象を内在化し,情緒的対象亘常性を確立するまでの過程である」

(引用:大学生における自我同一性と分離個体化の関連について,p160,左列7-12行目)

そして、そのプロセスを1枚の画像にまとめたものが↓↓こちら。

分離-固体化のプロセス

では、具体的にどのようなプロセスをたどるのでしょうか?

マーラーの分離・固体化のプロセスには、「時期」という3つの分類があり、さらに下位分類として6つの「段階」があるということですね。

「この研究によって「分離-個体化」のプロセスにおいて重要な節目となる時期や段階区分が自我発達と絡めながら定められ,「未分期」,「分離個体化期」,「情緒的対象恒常性確立期」という3つの時期と「正常な自閉期」,「正常な共生期」,「分化期」,「練習期」,「再接近期」,「個体化期」という6つの段階が定められた」

(引用:家族メンバーのやりとりが心的発達に与える影響―ビデオ録画データ観察解析で考察する対象関係論―,p37,左列【M.S. Mahlerの分離-個体化理論】13-20行目)

その中身を具体的にみてみることにしましょう(^^)/

未分期(0~4カ月)

未分期は「正常な自閉段階」と「正常な共生段階」から構成されます。

正常な自閉段階 (0~2ヵ月)

この時期は、「自分=母親」だと思っている段階です。

「人間は出生時には未熟であり,生存上乳児は絶対的に母親に依存し,母親に融合し一体であるという幻想のもとに誕生する」

(引用:大学生における自我同一性と分離個体化の関連について,p160,左列13-16行目)

「正常な自閉段階は、子宮外生活の最初の2~3週間における、母親を認識しない一時的ナルチシズム期である」

(引用:「個」と「関係性」からみたアイデンティティ研究の動向と展望-発達早期における「個」と「関係性」の起源に着目して-,p230,【(3)Mahler et al.の分離-固体化発達の理論】5-6行目)

正常な共生段階 (2~4ヵ月)

この時期は、ぼんやりと「自分≒母親」という認識を持ち始める時期のようです。

「2ヵ月目以降になると,正常な共生段階に入り,欲求充足対象がぼんやりと意識されてくるにしたがい,内部と外部の識別が生じてくる.つまり,母子の聞に境界が生じてくるが,その境界は流動的であり,満足が与えられ欲求が解消されると境界も消失する」

(引用:大学生における自我同一性と分離個体化の関連について,p160,左列16-21行目)

分離固体化期(4~24カ月)

マーラーの理論の中心部分ですね(^^♪

分離固体化期は、分化期・練習期・再接近期・固体化期から構成されます。

さらに「練習期」は、早期練習期・固有の練習期の2つにわかれ、初期再接近期・再接近危機・危機解決期の3つにわかれるとされます。

分化期(4~7ヶ月)

正常な共生期では、子どもが「ぼんやりと」母と自分が別の存在であることを意識する段階でしたが、分化期では、その境界線がより「はっきりと」してくるということでしょうか。

「この分離一個体化過程とは,Mahler,M.S.によると,乳児ははじめ身体的・精神的に母親と一体化した共生的関係にあり,次に自他未分化な状態にある乳児が次第に母親から分離し外界に興味を持ち初め(分化期)」

(引用:青年期における分離一個体化と不安,p195,2段落,1-5行目)

「生後4~5か月頃、分離-固体化過程の第1段階,<分化>の始まりがみられる。生後6か月目に、分離-固体化における試験的試みー母親の髪などをひっぱることーが始まる」

(引用:「個」と「関係性」からみたアイデンティティ研究の動向と展望-発達早期における「個」と「関係性」の起源に着目して-,p230,【(3)Mahler et al.の分離-固体化発達の理論】p230,3段落,1-2行目)

練習期(7~13か月)

歩行能力の発達にともない、ここから一人で外の世界に旅立つ準備にはいるということでしょうか。

「練習期は直立歩行能力の獲得に始まり、母親の膝から離れて世界を探索にでかけてゆく時期である」

(引用:Gender Identityの初期形成についての理論的検討-臨床的見地から-p186,15-24行目)

  • 早期の練習期(7~10ヵ月)
  • 固有の練習期(10~13か月)

ちなみに、早期の練習期と固有の練習期というのは、論文の【表1 ワロン,ピアジェ,エリクソン,フロイト,マーラーの発達理論の比較】に基づいています。

詳細の記述はありませんが、練習期のより細かい分類だと考えられます。

再接近期(15~21カ月)

練習期が「準備」だとすると、再接近期は「本番」ということでしょうか。

「再接近期は、完全に身体に分化して活動できるようになった子どもが、それゆえに分離の不安にさいなまれ、心理的にも情緒的恒常性を獲得して一人で機能できるようになるまで、再び母に接近して、共生時代とはまた違った別々の個体同士としての緊密な情緒的交流を求めにやってくる時期である」

(引用:Gender Identityの初期形成についての理論的検討-臨床的見地から-p186,2段落,6-9行目)

そして、再接近期は、初期再接近期・再接近危機・危機解決期の3つわかれるようです。

再接近期は、15~18カ月の初期再接近期、18~24カ月の再接近期危機、21カ月以降のこの危機を個人的に解決する時期3期に区分されている」

(引用:Gender Identityの初期形成についての理論的検討-臨床的見地から-p186,3段落,1-3行目)

以上の内容をまとめると↓↓このようになります(^^)/

  • 初期再接近期→子は探索結果を母親と共有する。
  • 再接近期危機→子は母に気持ちをぶつけるが、母もすべての要求に応えられるわけではないと知る。これにより、分離不安が生じる。
  • 危機の解決期→子は母との適切な距離感を発見し、分離不安が和らぐ。

分離不安とは?

分離不安は、子どもが母親から距離をとることで生じる不安とされています

子は、母にくっついているときも、離れいてるときもどうように愛情を注がれているという実感を持つことで、自立していくとさいれています。

分離不安とは、乳幼児が母親からひき離される時に示す不安のことである。分離不安それ自体は病的なものではないが、分離不安が強すぎる場合には生活上の問題が生じる。

(引用:移行対象・移行現象からみる大学生における分離不安に関する研究,p21,右列,1-15行目より)

ちなみに、境界性パーソナリティの主症状としてよく言われる「見捨てられ不安」は、子が母から離れいてるときに、適切な愛情を実感できずに、うまく自立ができなかったことによるものだと考えられているようです。

固体化期(21~24ヵ月)

固体化期に関しては、すっきりとした説明がみつけられなかったのですが、一人の個人として自分をはっきり認識する段階だと考えられます。

「乳児はやがて玩具などの「移行対象」(青年では,友人)と言う母親の代理的存在の助けを得て母親との間に適切な距離を見いだしてこの危機を越え,母親と自分とが異なる存在であることを受け入れて安定した自律的な存在になる(個体化期・情緒的対象恒常性の確立時期)」

(引用:青年期における分離一個体化と不安,p195右列下から5行目-p196左列2行目)

情緒的対象恒常性確立期(24~36ヵ月)

ここがゴールですね。

つまり、子が「心の中に母の存在を思い浮かべられるようになる」ということです。

これが、後々の心の安定につながっていくようです。マーラーによれば。

「最後の下位段階,(ほぼ3年目では、明確な個体性の達成、および、対象恒常性のある程度の達成がみられる。対象恒常性は、一貫した母親の内的表象を次第に内化することによって確立される」

(引用:「個」と「関係性」からみたアイデンティティ研究の動向と展望-発達早期における「個」と「関係性」の起源に着目して-p230,最終段落,1-2行目)

それぞれの期間について

ちなみに、いくつかの論文に目を通すと、それぞれの時期における期間が論文によって異なっているので、「だいたいこのぐらい」で理解するのが良いと考えられます。

例えば、「正常な自閉期」において、ある論文では以下のように述べています。

「正常な自閉段階は、子宮外生活の最初の2~3週間における、母親を認識しない一時的ナルチシズム期である」

(引用:「個」と「関係性」からみたアイデンティティ研究の動向と展望-発達早期における「個」と「関係性」の起源に着目して-,p230,【(3)Mahler et al.の分離-固体化発達の理論】5-6行目)

一方、「内なる他者」と「間主観性」の接点 : アンリ・ワロンとD.N.スターンの発達論の比較からの表をみると「0~2カ月」とされています。

また、練習期と分離不安については、こんな記述があるように、それぞれの境界性なあいまいということでしょう。

「分化期は練習期と重なっており」

(引用:「個」と「関係性」からみたアイデンティティ研究の動向と展望-発達早期における「個」と「関係性」の起源に着目して-,p230,【(3)Mahler et al.の分離-固体化発達の理論】p230,2段落,6行目より)

まあ、当然といえば、当然なのですが、勉強する上では混乱してしまうポイントだと思い最後にふれておきました。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

以上をまとめた内容がこちらになりますね。

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それではまた(^^)/

参考文献

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