中枢性統合とは?~自閉症スペクトラムと、その弱さの関係~

理論

この記事は、↓↓こんな方向けに残した内容になっています。

  • 中枢性統合って、一言でいうとなに?
  • 中枢性統合が弱いとどうなるの?
  • 中枢性統合の弱さと自閉症スペクトラム(ASD)はどんな関係があるの?

ですので、この記事を読み終わった後に、「中枢性統合ってなに?」と聞かれたら、「〇〇のことです!」と答えられるようになっていたら、僕のミッションは完了です(^ω^)

結論~中枢性統合とは?~

それでは、結論からいきましょう(^^)/

中枢性統合とは、「木を見て、森もみる力」のことです。

これで、この記事の目標は達成です(笑)

では、ここで質問です。

「中枢性統合とは?」

いきますよ?

「せーの」

はい、答えられましたか?

そうです!

「木を見て、森もみる力」

のことです。

これで、この記事の目標は達成です(笑)

とまあ、茶番はこれぐらいにして、ここからは真面目です(`・ω・´)キリッ

「中枢性統合とは定型発達で見られる情報処理過程の特徴の一つで情報を統合して、文脈の中でより高次の意味を構築する傾向を指す」

(引用:自閉症スペクトラムのコミュニケーション障害,p253,右列,2段落,10-13行目)

もう1つ定義のせておきますね。

中枢性統合とは別々に入ってくるさまざまな情報をまとめて、状況に応じたり、より高次の意味を構築していく能力である。さまざまな情報を一定の脈絡のなかで取捨選択して、しばしば細部の情報を犠牲にしても1つの情報にまとめあげることをわれわれは日常的に行っている。この中枢性統合に障害があるために、細部にこだわり、情報を統合して全体としての意味を把握するうえで問題が生じやすくなる。木を見て森を見ずということになる。

(引用:発達障害を理解するーその実際と最新の研究ー,p372,右列,【(4)中枢性統合】1行目-p373,左列3行目)

つまり中枢性統合は、「部分にとらわれず、全体をみる力」ということですね。

(´-`).。oO(最初から、そう言えや)

中枢性統合の具体例

とはいえ、中枢性統合の力を、ぼくたちは、どのように日常で発揮しているのかわかりませんよね?

ですので、その考えられる具体例をいくつか挙げてみます。

車の運転をする

道路標識や他の車を気にしつつ、ブレーキ・アクセルの踏み加減を調整しつつ、ハンドルの操作して安全に運転をするという動作は、複数の情報を瞬時に統合しているという点で、中枢性統合の例だと考えられます。

料理をする

食材の色や大きさを判別し、食材を切る際のナイフの感触を確認しつつ、香りや味で調味料の加減を調整するなどはかなりのマルチタスクでう。火加減やタイマーを管理するなどの計画性必要なことから、かなり高度な例ですね。

会話をする

相手の話を聞きつつ、表情やジェスチャーを読み取り、かつ内容を理解し、自分の発言を適切に構成してやりとりを進めるというのもまた、簡単なようで、かなり高度なタスクをこなしていると言えそうです。

ノートの書き写しなど(板書)

子どもの例でいうと、先生の話を聴きながら、要点を取捨選択し、ノートをとるというのもまた、中枢性統合の問題が関与していると考えられます。

地図をみて、目的地をめざす

地図をみて、目的地と自分の現在位置を把握し、行先に向かうということも1つの例としてあげられそうです。

中枢性統合(central coherence)とは

色々な情報を組み合わせながら全体像を把握したり、状況に応じて適切に行動したりする力のことです

(引用:広島県公式ホームページ 第3章 脳の働きと認知特性,p27【中枢性統合(central coherence)とは】1-2行目)

以上を踏まえると、中枢性統合には、知覚運動協応も大きく関連していそうです。

きっと、「視覚と運動の統合」というのも、他の感覚情報の(中枢性)統合の1つなのでしょう。

ASDと中枢性統合の関連

さて、中枢性統合について、わかってきたでしょうか?

では、ここで、ASDと中枢性統合の関連について考えてみましょう。

なぜなら、ASDは中枢性統合が弱いと言われているからです

Firthは自閉症では中枢性統合がうまく働かず、トップダウンの統制がきかず、抹消の情報は統合されないため、全体的な意味の抽出が困難になり、結果として経験や思考の断片化が起こると考えた。自閉症者では全体的な情報処理(global processing)よりも部分的な情報処理(local processing)や細部に焦点を当てた情報処理(detail-focused processing)を好む傾向があることもこれと一致している

(引用:自閉症スペクトラムのコミュニケーション障害,p253,右列,3段落,13-20行目)

中枢性統合とASDの主症状との関係を整理すると以下のようになると考えられます。

なぜ、人間関係が下手なのか?

なぜ、強いこだわりがあるのか?

そういった症状の背景にある理論的な説明の1つが、「中枢性統合」です。

共同注意心の理論については、リンクをたどってください!(^^)!

では、中枢性統合が弱いとどうなるのでしょうか?

その具体例をみていきましょう

1番は、「細部に注目してしまう」という点で、「こだわり」ではないでしょうか。

ただ、「社会性」や「コミュニケーション」の部分でどのように関連があるのかわかりづらいと思いまうすので、先ほど挙げた中枢性統合の具体例と照らし合わせながら考えてみます。

車の運転ができない、できても危険

道路標識や他の車を気にしつつ、ハンドルの操作して安全に運転をするという動作がうまくいかない。なので、事故を起こしやすくとても危険です。

料理がぐちゃぐちゃ

火加減や味の調整、食材を切るなどが困難なことが予測されます。そのため、料理の味加減や、一体何をつくったのかみばえもよくわからないものになるでしょう。

会話が成立しない、話しかけるタイミングがわからない

相手の話を聞きつつ、表情やジェスチャーを読み取り、かつ内容を理解することがハードレベルですね。人間関係が苦手というのも納得ですね。

どこを書けばいいかわからないので、全部書くか手が止まる

この例もよく、あります。「どの情報を書けばいいのかわからない」「要約が苦手」というのは、中枢性統合が反映されていたわけですね。

よく迷子になる、いわゆる方向音痴

地図の向きや自分の現在位置を確認しつつ、かつ、そこへ向かうというのはかなりのマルチタスクですね。

「地図がみれない」とか「よく道に迷う」という困りごとには、この中枢性統合の弱さが関与して生じていると考えられます。

ただ、これらの例は、「中枢性統合」という観点のみから、僕がよくきく例なのですが、純粋に「中枢性統合の弱さ」だけが影響しているわけではなさそうです。

視野が狭く、視点を変える動作が苦手(目の運動機能)(中枢性統合)

(引用:埼玉県特別支援教育教育課程編成要領1_特別支援学校編 第2章 自閉症教育, p210,【児童生徒を知るところからスタート】より)

人の顔や行動の特徴の細部をとらえ、変化によく気づく(中枢性統合)

(引用:埼玉県特別支援教育教育課程編成要領1_特別支援学校編 第2章 自閉症教育, p207【児童生徒を知るところからスタート】より)

「人の顔と名前が一致しない」というのも、「中枢性統合の弱さ」が関係しているのですね。

確かに、そういうことを訴える発達障害の方は多い印象です。

症状としては、相貌失認とダブりますね。

最後に1つ、興味深い例

最後に1つ、これも「中枢性統合の弱さ」が関与してる?

と思うような事例を論文からみつけたのでご紹介して終わりたいと思います。

「30 代男性.ASD.高校卒業以後家にひきこもり,家族以外とコミュニケーションの機会がないということで外来を受診.知的障害はない.図 1 は初診時,筆者の「時計の絵を描いてください」という求めに応じて描かれたものである.描画に要する時間を気にかける様子は全くなく,15 分かけてこの絵を描きあげた.筆者はこれまで高次脳機能障害の診察で多くの人に時計の絵を描いてもらったが,このような写実的,具象的な時計描画をした症例は経験したことがない.本人が描いたのは個別性の強い特定の時計であり,カテゴリーとしての時計一般の性質を抽出したものではないという点において Goldstein の提唱した抽象的態度の欠如がみられる,と解釈することもできる.また,15 分もかけて時計の絵を描くのは,診察場面における「スクリプト知識」を理解していないゆえの行動ともいえる.この課題自体は他者の精神状態の理解に直接関与しないが,この方において,コミュニケーションがなぜうまくいかないのかという理由の一端がこの課題の結果に現れている」

(引用:成人発達障害のコミュニケーション障害,p93,右列【症例1】1行目-p94,左列,10行目まで)

(引用:成人発達障害のコミュニケーション障害)

中枢性統合という視点からみると、この人は、ひきこもりなので、おそらく部屋にある時計なのでしょうが、たしかに「時計を描いてください」と言われて、この時計は描かないですね。

というか描けない(笑)

そういう意味でも、かなり細部を注視している気がしますよね。

ただ、この時計単体でいうと、全体像は描けているという意味では、また「中枢性統合の弱さ」とは違うのでしょうか?

たまに、発達検査で「バウムテスト」を取ってるところもあるようですから、こういう視点での解釈も心理職としては大切になってきそうです。

また、たしかに「診察場面における、文脈」点を踏まえると、「一般常識」に欠けている部分もありそうですし、これもまた、中枢性統合の弱さが関連しているように思われます。

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか?

「中枢性統合」や、ASD特性とのつながりに対する理解は深まったでしょうか?

最後に、本記事の内容をまとめておわかれです(^^)

  • 中枢性統合とは、「木をみて、森もみる力」のことです。
  • 中枢性統合を発揮している日常例として、車の運転や地図をみる力などがある。
  • ASDには、中枢性統合の弱さが障害特性としてみられる
  • 中枢性統合が弱いと、車の運転は危険であり、地図をみるのが苦手だったりする

ということなんですね~

それでは、また(^^♪

参考文献

臨床心理士資格試験でも「中枢性統合」は出題されています

ということで、臨床心理士試験を受験される方は以下のページも参考にしてみてください!(^^)!

それではまた♪

コメント

タイトルとURLをコピーしました