この記事では、「実行機能」に含まれる要素のうちの1つである、「抑制」についてまとめておきます(^^ゞ
- 抑制ってなに?
- 実行機能における抑制の位置づけは?
- 抑制ってどんな種類があるの?
こんな疑問をお持ちの方はぜひご参考ください♪
結論~抑制とは?~
抑制とは、強く引きつけられるけれど正しくない考えや行動を抑える力のことです。
実際にやってみましょう(^^)
Go/No-go課題
◯(Go刺激)が表示されたら、「反応」ボタンを押す。
×(No-go刺激)が表示されたら、「反応」をボタンを押さない。
この課題は、反応の抑制機能を測定します。
正解: 0
不正解: 0
試行数: 0/20
さて、いかがでしたでしたか?
今あなたがやった課題で言えば、×(no-go)が表示されたときに、「ボタンを押さない」というのが、「抑制」です。
「それでは、抑制とはいったいどのような機能なのであろうか。端的にいってしまえば、抑制機能とは何かへの反応を抑える働きである。Go/No-go課題でいえば、go刺激が提示されたときには、スイッチを押し、no-go刺激が提示されたときには、スイッチを押さないように指示されるが、抑制機能は no-go 刺激のときにスイッチを押さないようにする機能である」
(引用:実行機能の形成と衰退:抑制に注目して,p177,右列,2段落,1-7行目)
では、体験的に理解ができたところで、もう少し専門的に考えを深めてみたいと思います(^ω^)
実行機能と抑制の関係性
それでは、まず「抑制」という概念をもう少し俯瞰してみようと思います。
これは、実行機能に含まれる、要素の1つです。
つまり↓↓これ

実行機能は目標に向けて自らの思考と行動をコントロールするための汎用的な認知情報処理プロセスの総称であり,優勢反応の抑制 (inhibition)・認知セットの柔軟な切り替え (shifting)・ワーキングメモリに保持された情報の更新 (updating)などの下位コンポーネントが存在する (Garon,Bryson, & Smith, 2008 ; Miyakeet al., 2000 ;Pennington, 1997)。
(引用:心の理論の生涯発達における実行機能の役割,p93,右列,下から2行目-p94,左列6行目)
サリーとアンの課題から、抑制について考えてみる
では、次に「抑制」が発揮される必要のある、具体的な事案について考えてみましょう。
例えば、「サリーとアンの課題」があります。
この課題において、子どもは自分の視点からの「ボールは別の場所にある」という誤信念(自分にとって目立つ情報)を抑えて、サリーの視点に立ってボールのありかを考えなければ正しい答えを出せません。
つまり、ここでいう抑制とは、「自分の考えを抑えること」だと考えられます。
「抑制制御とは,子どもにとって優勢であるが不適切な表象やそれによってもたらされる反応を抑制する能力,すなわち不適切な優勢反応の抑制(inhibition of maladaptive prepotentresponse ) の能力である。「心の理論」課題に正答するためには,子どもは ,白己にとって目立った情報や反応を抑制し,他者についての表象を考慮するという,抑制制御の機能が必要となってくる。抑制制御は一・般的に遅延抑制 (delay inhibition) と葛藤抑制(conflict inhibition) という異なる機能に分けられている。
(引用:幼児における「心の理論」と実行機能の関連性ワーキングメ モ リと葛藤抑制を中心に,p172,左列,3段落,1-10行目)
さて、ここで新しい情報がでてきました!(^^)!
抑制には、さらに二つの下位概念があったということですね

遅延抑制と葛藤抑制
では、この2つの抑制の詳細をもう少し掘り下げてみましょう(^^ゞ
遅延抑制が自分の順番を待つといった衝動的な反応の抑制であるのに対し,葛藤抑制は,優勢な情報や反応を抑制し,もう一方の情報や反応を活性化させることと考えられている (Carlson&Moses,2001)
(引用:幼児における「心の理論」と実行機能の関連性ワーキングメ モ リと葛藤抑制を中心に,p172,左列,3段落,10-13行目)
となると、心の理論の説明で挙げられた抑制は、厳密には、「葛藤抑制」だと考えられますね。
これは、特に根拠があるわけではなく、僕の理解なのですが、遅延抑制は時間的な忍耐を要する状況に焦点を当てているのに対し、葛藤抑制は複数の選択肢や反応の間で適切な判断をする必要がある状況に焦点を当てていると考えられます。
わかりやすくいうと
- 遅延抑制・・・100か0、するかしないかの選択
- 葛藤抑制・・・AとBどちらを選ぶか
みたいな感じ。
そのため、具体例としては、それぞれ以下のような事案があてはまるのではないのでしょうか?
遅延抑制の例
- 順番を待つ
- 遊び場で他の子どもが滑り台を使っている間、自分の番が来るまで順番を待つ。
- おやつを我慢する
- 食事の前にテーブルに置かれたおやつを食べたい衝動を抑え、「後で食べる」という約束を守る。
- 話す順番を待つ
- 会話中、他の人が話している間、自分の意見を話したい衝動を抑えて、相手が話し終わるのを待つ。
葛藤抑制の例
- 誘惑に打ち勝つ
- ダイエット中に目の前の高カロリーなお菓子を選ぶ衝動を抑え、健康的なスナックを選ぶ。
- 不適切な反応を抑える
- 誰かに怒りを感じた際、衝動的に怒鳴るのを抑えて、冷静に話し合おうとする。
- 選択肢を熟考する
- ショッピング中、衝動的に派手な服を買う欲求を抑えて、日常で使える服を選ぶために一旦考え直す。
この様に考えると、どちらかというと、葛藤抑制の方が、高度な抑制な気がしますね。
で、おそらく「遅延抑制」はADHD特性と関連が強いのでしょう。
ただ、とりあえずこの記事のまとめは以上にしておきます(笑)
遅延抑制と葛藤抑制を測定する課題
遅延抑制に関する代表的な課題:
- タワー課題(Tower Building;Kochanska et al., 1996)
- 子どもが積み木などを使って塔を作る際に、指示を守りつつ衝動的な行動を抑える能力を測定する課題。
- プレゼント遅延課題(Present Delay または Gift Delay;Kochanska et al., 1996)
- 子どもにプレゼントを渡す前に一定時間待つよう指示し、その待機中にどの程度抑制できるかを評価する課題。
葛藤抑制に関する代表的な課題:
- クマ/ドラゴン課題(Bear and Dragon;Kochanska et al., 1996)
- 子どもに「優しいクマの指示には従い、怖いドラゴンの指示には従わない」というルールを守らせる課題。
- 昼/夜ストループ課題
- 昼間の絵を見せたとき「夜」、夜の絵を見せたとき「昼」と答えるよう指示される課題。自動的な反応を抑えて反対の答えを出す能力を測定する。
まとめ
さて、いかがでしたでしょうか?
最後に、本記事の内容をふりかえっておわかれです(^ω^)
- 抑制とは、「何かへの反応を抑える働き」のこと
- 抑制は、実行機能の下位要素の1つ
- 抑制には、遅延抑制と葛藤抑制がある
- 遅延抑制は、「順番を待つ」などの衝動の抑制、葛藤抑制は、「情報の抑制」がある。
参考
臨床心理士資格試験でも「実行機能」は出題されています
ということで、臨床心理士試験を受験される方は以下のページも参考にしてみてください!(^^)!
それではまた♪
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