この記事では、発達障害(ASDやADHD)の特性の背景の1つにある「実行機能」についてまとめておきます(^^ゞ
- 実行機能ってなに?
- どんな具体例があるのかわからない
- 実行機能には、どんな力が含まれるの?
こんな疑問がある方は、ぜひご参考ください♪
結論~実行機能とは?~
それでは、結論ファーストでいきましょう(^^)/
実行機能とは、「目標に向かって行動をコントロールする力」のことだと考えられます。
例えば、以下のように、目的に応じて実行機能の内容はそれぞれ異なります。
- 宿題:どの問題から始めるか考える(計画する力)
- ゲーム中:イライラしても冷静に続ける(感情を抑える力)
- 料理:レシピ思いだして野菜を切ったり、次に何をするか考える(記憶と切り替える力)
実行機能とは「意思決定や抽象的思考,合目的的な活動を円滑に進めるためのさまざまな高次機能」(日本LD学会,2011)や「目的達成のために適切な問題解決の様式を維持する能力」(Ozonoff, Pennington, & Rogers, 1991)と定義され,非常に包括的でさまざまな能力を含むことが想定されている概念である。
(引用:自閉スペクトラム症の認知機能―ASD特性を説明する理論にそって―,p476(78),右列【Ⅲ 実行機能理論】,1-7行目)
つまり、実行機能は、多くの要素を含んだ広い概念ということになるようです(´・ω・`)
一応、もう1つ論文をみておきます。
実行機能は、目標を到達するために、思考、行動、情動を制御する能力である。研究者によって定義が必ずしも一致しないが、おおむね、目標を到達するために必要であることと、その到達を阻害するような行動を制御するという点は含まれる
(引用:実行機能の発達の脳内機構,p202,左列,【実行機能の定義】,1-5行目より)
なるほど、広い概念であるが故に、「これ」とはっきり言うのがやや難しいようですね(´-`)
実行機能に含まれる能力
ということで、実行機能が何かはわかりました。
そして、やや広い範疇の概念であることもわかりました。
そのことを踏まえつつ、一体何が含まれるのでしょうか?
とりあえず、↓↓こちらの図に示した4つの概念は、割と共通して含まれる要素のようです。

具体的には,計画性(planning),認知的柔軟性(cognitive flexibility,set shift),抑制(inhibition),ワーキングメモリなどが含まれる (Hill, 2004a, 2004b ; Ozonoff &Jensen, 1999)。
(引用:自閉スペクトラム症の認知機能―ASD特性を説明する理論にそって―,p476(78),右列【Ⅲ 実行機能理論】,7-11行目)
では、この内訳を1つずつみてみることにしましょう
抑制(制御)
抑制とは、気になるけど正しくない考えや行動を抑える力のことです。
抑制について詳しく知りたい方はこちら(=゚ω゚)ノ
↓↓
認知的柔軟性
次に、認知的柔軟性についてです。
認知的柔軟性は、簡単に言うと「切り替え力」のようなものだと考えられます。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
- 英語の勉強がはかどらないので、別の教科を勉強する。
- 醤油を切らしていたので、代わりに塩で味付けする。
- Wifiが不調なので、You Tubeではなく漫画を読む。
第2の認知的柔軟性とは,ある次元から別の次元へ思考を柔軟に切り替える (switching) 能力といえる 。「心の理論」課題に正答するために必要な推論システムは,判断の基準となる対立する視点のうち, 一方の視点から推論を形成し,他方は無視するという,認知的に柔軟である能力としている。つ まり,「心の理論」 課題においては ,現在の自分を基準とした思考から他者を基準とした思考へと柔軟に切り替えるという,認知的柔軟性の機能が必要となる
(引用:幼児における「心の理論」と実行機能の関連性ワーキングメモリと葛藤抑制を中心に,p172,右列,4-12行目)
認知的柔軟性を測る課題
この「認知的柔軟性」を測定するための課題として、以下のようなものがあります。
この認知的柔軟性を測定する課題としては、DCCS(Dimensional Change Card Sort;Frye, Zelazo, & Palfai, 1995)が挙げられる。これは、色と形という2つの次元の一方を基準としたカードの分類から、もう一方の次元を基準としたカードの分類への柔軟な切り替えが要求される課題である。年齢や言語能力を統制しても、DCCSの成績が「心の理論」課題の成績を有意に予測することがこれまでの研究から示されてきた(Frye et al., 1995;Muller, Zelazo & Imrisek, 2005)。DCCSは、初めに使用していた分類次元を抑制し、他方の次元を活性化させるという意味で、葛藤抑制の課題とも考えられている(e.g., Carlson & Moses, 2001)。
(引用:幼児における「心の理論」と実行機能の関連性ワーキングメモリと葛藤抑制を中心に,p172,右列,12-23行目)
これって、ウィスコンシンカード課題のことですよね?
と思ったのですが、ご存じない方は、別記事にて簡易なものを作成してみたのでご参考ください。
体験的に理解できます(=゚ω゚)ノ
↓↓
ワーキングメモリー
続いて、ワーキングメモリーですが、端的に言うと「同時に複数の作業をする力」だと考えられます。
ワーキングメモリーについても別記事にまとめたので、詳しく知りたい方は以下の記事をご参考ください(=゚ω゚)ノ
↓↓
計画性
最後に「計画性」についてです(^^)
これを最後に持ってきた理由としては、実行機能の定義に「計画性」が含まれていないものが割と多かったからです。
最初に実行機能の要素の1つに「計画性」を含んだのですが、論文を複数読んでるうちに、わかってきたので、このようなブログの構成になってしましました(´・ω・`)ゴメン
その要点をまとめると以下の3つが挙げられます。
- 実行機能と計画性は、重なる部分もある
- 実行機能に何が含まれるかは、研究者間で見解が異なる
- 「目標志向的」と「制御」は、概ね含まれる
なので、実行機能に計画性は含まれるか?
という問いの答えは・・・

計画性と実行機能】,2段落,4-10行目)
つまり、実行機能と計画性は重なりが多いが、概ね「別の要素」だということになりそうです。
そんで、また別の論文をみると↓↓これな(´-`)
心理学で扱われる計画性と近似した概念に実行機能(executivefunction)がある。実行機能は,脳の前頭前野において執行される計画性,作動記憶,注意,抑制,セルフモニタリング,自己制御,起動といった多様な認知能力を包括する用語として用いられているもので(Goldstein,Naglieri,PrinciottaandOtero,2014)。このように述べると,計画性は実行機能の一部のように捉えられるかもしれない。
(引用:学童期に獲得される計画性とはいかなる能力か?─心理測定的知能と実践的能力の二つの視点から─,p78,左列,【心理測定的アプローチにおける計画性と実行機能】,1-8行目)
ということで、ここまでの理解をベン図にすると↓↓こんなイメージですかね。

◆実行機能に概ね含まれるであろう概念
- 抑制
- 認知的柔軟性
- ワーキングメモリ
◆実行機能と重なりが大きい概念
- 計画性
◆実行機能に含まれているであろう概念
- 注意
- セルフモニタリング
- 起動
まとめ
さて、いかがでしたでしょうか?
実行機能についての理解は深まったでしょうか(^^)
最後に、本記事の内容を振り返っておわかれです。
- 実行機能は、「目標に向かって行動をコントロールする力」のこと
- 実行機能には、主に①抑制、②認知的柔軟性、③ワーキングメモリーの3つが含まれる
- 計画性と実行機能は、重なる部分もあるが、概ね異なる概念である
- 実行機能に何が含まれるかは研究者間で一致していない。
ということなんですね~
それではまた(^^ゞ
参考
- 自閉スペクトラム症の認知機能―ASD特性を説明する理論にそって―
- 実行機能の発達の脳内機構
- 幼児における「心の理論」と実行機能の関連性ワーキングメモリと葛藤抑制を中心に
- 心の理論の生涯発達における実行機能の役割
- 「実行機能」再考−発達障害研究の視点から― 高橋・野村論文へのコメント ―
- 学童期に獲得される計画性とはいかなる能力か?─心理測定的知能と実践的能力の二つの視点から─
臨床心理士資格試験でも「実行機能」は出題されています
ということで、臨床心理士試験を受験される方は以下のページも参考にしてみてください!(^^)!
それではまた♪
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