この記事では、実行機能の1つである、「ワーキングメモリー」についてまとめています。
- ワーキングメモリーってなに?
- 実行機能とワーキングメモリーの関係は?
- ワーキングメモリーの具体的な中身は?
こんな疑問がある方は、ぜひご参考ください(^^)/
※この記事は、発達障害の症状の背景に「実行機能の弱さ」があるという前提に基づいて作成しています。
結論~ワーキングメモリーとは?~
ワーキングメモリーは、端的に言うと「同時に複数の作業をする力」だと考えられます。
では、次にワーキングメモリーを体験的に理解してみましょう(^^)/

「手をたたきながら、9の段を言ってください」
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さて

「いかがでしたか?」
まさに、今、あなたはワーキングメモリーを発揮していたはずです。
ワーキングメモリとは ,入力される情報を処埋しながら,一方で正確に保持しておき,必要なきに適切な情報を活性化させる能力である
(引用:幼児における「心の理論」と実行機能の関連性ワーキングメモリと葛藤抑制を中心に,p172,右列,3段落,1-3行目)
だとすると、次のような日常場面でもワーキングメモリーを発揮していることになりそうですね。
計算問題を解くとき
- 複雑な計算をする際、途中の計算結果を記憶しつつ、新しい計算を進める。
- 例: 「123 × 45」を手計算で解くとき、途中の「123 × 5 = 615」を覚えたまま「123 × 40」を計算し、その結果を組み合わせる。
会話中の理解と応答
- 誰かが長い説明をしているとき、その内容を整理しつつ、適切なタイミングで質問や応答をする。
- 例会議で複数の発言を聞き、要点をまとめて意見を述べる。
実行機能とワーキングメモリーの関係
次に、実行機能とワーキングメモリーの関係です。
これは、すでに述べた通り、実行機能に含まれる要素の1つです。

実行機能は目標に向けて自らの思考と行動をコントロールするための汎用的な認知情報処理プロセスの総称であり,優勢反応の抑制 (inhibition)・認知セットの柔軟な切り替え (shifting)・ワーキングメモリに保持された情報の更新 (updating)などの下位コンポーネントが存在する (Garon,Bryson, & Smith, 2008 ; Miyakeet al., 2000 ;Pennington, 1997)。
(引用:心の理論の生涯発達における実行機能の役割,p93,右列,下から2行目-p94,左列6行目)
で、さらに引いたみると・・・
↓↓こう

で、何故この位置づけを確認したのかというと、ワーキングメモリーは、心の理論と関係が深いと考えられているからです。
後ほどまたこの話しができてきますので、頭の片隅にそのことを置いておきながら、読み進めてみてください。
あなたのワーキングメモリーを活かして(笑)
ワーキングメモリーの内容を深堀してみる
ワーキングメモリーについて、わかってきたでしょうか?
では、もう少し深堀りするために、ワーキングメモリーを測る課題をしらべてみました。
- 数逆唱スパン課題
- 単語逆唱スパン課題
- 数えとラベリング課題
1と2に関しては、馴染みがありますが、3を知らない方は多いのではないでしょうか?
数えとラベリング課題は、以下のようなものだそうです。
Gordon and Olson (1998) は幼児を対象として、物の名前を言いながら同時に数字を数えさせるというように、ワーキングメモリに負荷をかけたラベリング課題を実施した。例えば、机の上に靴とコップとスプーンが置いてあるときは、それらを順番に指さしながら「1、靴、2、コップ、3、スプーン」と言えれば正解となる。ある課題をしながら別の課題を同時に処理する二重課題 (dual task) は、ワーキングメモリに大きく依存しなければ遂行できない課題である (Baddeley & Hitch, 1974)。
(引用:心の理論の生涯発達における実行機能の役割,p90,右列,下から11-1行目)
「二重課題」と言われると、ピンときますね。
療育現場ではこういうのよくやってるかと(笑)
で、重要なのは、次ですね。
これらの課題と、「心の理論」の繋がりが強いという話です。
ワーキングメモリ負荷のあるラベリング課題の成績は心の理論課題の成績と高い相関を見せることがわかった。これらの他にも多くの研究が,幼児期のワーキングメモリ容量と心の理論の発達が同期することを追認してきた (Carlson et al.,2002; Keenan,Olson, & Marini, 1998 ;小川・子安,2008)。
(引用:心の理論の生涯発達における実行機能の役割,p97,左列,1-7行目)
また、数逆唱も同様に心の理論とのつながりが強いようです。
Davis&Pratt(1995) は,数逆唱課題 と「心の理論課題の成績の相関が高いことを示し,「心の理論」課題では,1つの課題状況やストーリーに対して,自己と他者,現実と誤信念といった複数の表象を保持しておく必要があるとしている
(引用: 幼児における「心の理論」と実行機能の関連性ワーキングメモリと葛藤抑制を中心に, p172,右列,下から17-12行目)
ということは・・・
カウンセリング業務って、ワーキングメモリー酷使してますね(笑)
で、それはさておき、先ほど示した樹形図にこの情報を加えると↓↓こうなります。

いやはや、なるほどという感じですね。
発達障害の傾向を調べる際には、ワーキングメモリーが弱い場合は、「相手の立場に立つ」ということも苦手な可能性があるということは、意識しておかないといけないんですね~
勉強になりました(笑)
まとめ
さて、いかがでしたでしょうか?
最後に、本記事の内容を振り返っておわかれです。
- ワーキングメモリーとは、同時に複数の作業をこなすことで発揮される
- ワーキングメモリーは、実行機能の1つである
- ワーキングメモリーを測る課題には、「数えとスパン課題」などがある
- ワーキングメモリーと心の理論には高い相関がある
ということなんですね~
それではまた(^^)/
参考
臨床心理士資格試験でも「実行機能」は出題されています
ということで、臨床心理士試験を受験される方は以下のページも参考にしてみてください!(^^)!
それではまた♪
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