ビネー式知能検査とは~基底年齢・問題・やり方etc~

臨床心理査定

この記事は発達障害児を抱える保護者ないし、心理学学習者に向けて、ビネー式知能検査について解説してます。

この記事に目を通すことで、検査の概要や目的などがわかります。

  • 対象/2歳〜成人まで(成人にやるケース見たことないですが・・・)
  • 問題構成/2〜13歳、成人①〜③で異なる。全113問
  • 結果/2〜13歳は精神年齢、成人はDIQがわかる

ビネー検査とは

ビネー式知能検査は、ビネー(Binet,A)としもん(Simon,T.)が開発し、ターマン(Terman,L)によって修正・発展された知能を測定するための検査です。

日本では、田中ビネー(田中寛一)鈴木ビネー(鈴木治太郎)が代表的だそうですよ。

(現場では田中ビネーしか見たことないですが・・・)

と、そんなことは正直どうでもよいのですが、最初にこの検査の位置付けを確認しておきましょう。

以下の図版をご覧ください。

ビネー式知能検査は、主にインテーク面接の過程(とも限らないが)で行われる、臨床心理アセスメントの際に用いられる技法のうち、クライエントの知能を測定する検査法の一つであると述べることができます。

(位置付け的な定義)これは、心理検査を実施する者にとっても、心理検査を受ける側にとっても重要なことですね。

検査の目的と成り立ち

検査の位置付けがわかった所で、続いては、ビネー式知能検査の目的にとついて、歴史的背景を切り口にして掘り下げたいと思うのだが、それについては下記を引用しておこうかな。

フランスでは1882年に初頭義務教育制度が制定されて以来、普通教育についていけない精神遅滞児が問題となっていた。正常児と精神遅滞児の区別が主観的になされたため、本来、特殊教育が必要な精神遅滞児が、単なる怠け者として厳しく扱われるということもあった。ビネーが医師のシモン(Simin,T.)と協力して1905年に発表した世界初の知能検査は、正常児と精神遅滞児を客観的に区別するのが目的であった。

(引用:臨床現場のための心理検査入門,p11)

これでわかったでしょう?

今風に言えば、グレーゾーンの児童に明確な線引きをすることが目的だということになります。

ビネー式知能検査の特徴とウェクスラー検査との違い

さて、これで大まかなアウトラインは掴めたと思うのですが、具体的にビネー式知能検査にはどのような特徴があるのでしょうか?

また、ウェクスラー式知能検査とどのような違いがあるのでしょうか?

続いては、それらの点を明らかにしていきたいと思います。

概観的知能検査

第一に、ビネー式知能検査の大きな特徴は、概観的知能検査であるという点が挙げられます。つまり、全体的な知能の発達度(IQ)はわかるが、知的能力ごとの違いはわからない

例えば、児童によって、言語能力が優れてるのか、計算能力が優れてるのかは違いがあるが、その細かい違いがわからないという意味です。

なので、それが、ビネー式知能検査の特徴であると同時に、欠点でもあるのです。

ゆえに、その欠点を補完する検査として、ウェクスラー式知能検査が存在します。下図はイメージを膨らませるために役立ててください。

ビネーは、知能をマクロ的に、ウェクスは知能をミクロ的に捉える検査です。

ビネーとウェスクの違い

このように、要素に分解しない知能のことを一般知能と言ったりします。

スピアマン(Spearman,C.)の知能2因子説によれば、知能は一般因子特殊因子に別れるとされ、前者は、あらゆる知的活動に共通して働き(先天的)、後者は、課題に応じて使い分けられる(後天的)ものなのだとか。

測定項目・指標数値

第二に、ビネー式知能検査では、概観的知能を、精神年齢とIQの二つの指標で算出します。

精神年齢

ビネー式知能検査では、各年齢群の児童の50-70%が正解できる項目をその年齢の標準問題として設定されます。例えば、10歳の子供の50%が正解する項目であれば、それは10歳用の問題として使われる。10歳の児童が10歳用の問題には正解できるが、11歳の問題に正解できない場合、その児童の精神年齢は、10歳と判定される

基底年齢 Basal age(関連用語)

基底年齢とは全ての問題が合格できる年齢級に”1″を足した年齢のことです。つまり、10歳の問題に全て合格できるが、11歳の問題には合格できない問題があるという場合、基底年齢は”11”ということになるでしょう。

知能指数の算出

知能指数(IQ)は、シュルテンによって発案された概念。以下2通りの算出方法がある。

生活年齢と精神年齢の比

具体的には、精神年齢÷生活年齢×100で算出される。生活年齢とは、被験者の実年齢のことで、例えば、実年齢が12歳で精神年齢が15歳の場合、15÷12×100=IQ125となる。

同年齢集団内での位置を基準とする

対象集団の中の相対的な位置から算出する方法で、これを偏差知能指数(DIQ)と呼びます。

DIQは、田中ビネー式知能検査において用いられ、検査を受ける人が対象となる年齢グループ集団に置いて平均的な知的能力と比較してどの程度の知的能力を持っているかを示すことができます。

これは、それ以前のビネー式知能検査において、発達的な視点が抜け落ちていたことに起因します。

生活年齢の算出

生活年齢の算出方法についても述べておきます。

これは、シンプルに検査実施日からその子どもの生年月日をひくことで求められます。

例えば、

  • 検査日・・・2020年3月12日
  • 生年月日・・・2015年5月13日

の場合はどうなるでしょう?

答えは、「4歳10ヶ月」です。

答えが合わない方は、矢印に沿って吹き出しの解説を参照してください。

生活年齢の算出方法

以上を踏まえ、算出方法を理解していれば、次の計算もできるはずです。

  • 検査日・・・2020年3月12日
  • 生年月日・・・2012年8月13日

さあ、答えはいくつでしょうか。

正解は、「7歳6ヶ月」です。

それでも計算したくない

ちなみに、それでも計算がしんどいという方向けに、スプレッドシートで自動計算フォーマットを作ったのでそちらをご興味のある方は、役立ちコンテンツに格納してあります(^ω^)

どんな問題が出るのか?

これは実際に検査の様子を見たことがない方にとっては気になる所ではないだろうか。こちらも先ほどの書籍から引用させてもらう。

たとえば、1歳級の問題には、図形を板にはめ込ませる問題、積み木を積ませる問題、ものの名前を言わせる問題などがある。

(引用:臨床現場のための心理検査入門,p13)

また、4本足のうち1本足が足りないイラストを見せられて、それのどこがおかしいかを答えるといった絵の不合理の課題や、机や壁などを叩きそれを頭の中で数えられるかといった打数かぞえなどの課題がある。また、牛や金魚の絵を見て「これ何?」と聞かれる叙述言語能力を問われる課題もあるため、興味がある方は↓↓の記事を参照ください。

ビネー式知能検査が適用される時期

また、グレーゾーンの児童なら例外なく知能検査を受けられるのか、あるいは実施して良いのかと言えば当然そうではありません。

これは、先ほど提示したビネー式知能検査が生まれた歴史的背景に基づいて考えればわかるはずです。

義務教育制定後に、正常児と精神遅滞児を区別することが目的で登場下のですから、幼児から学童への移り変わりが目安となります。

ビネー式知能検査タイミング

ABA支援を受ける場合、病院で発達障害etcの診断が必要なので、ある程度知識を持って足を運ぶのが吉です。

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