【心理学】心理検査における投影法とは~メリットとデメリット~

臨床心理査定

投影法についてのまとめ記事です。

知識水準としては、大学院受験を控えてる方向けです。

定義

投影法とは、曖昧で多義的な刺激に対する被検査者からの自由な反応を得て、それを分析することで被検査者の性格特徴を把握しようとする性格検査の総称。

曖昧で多義的”の意味は、個々の解釈次第でいかようにも答えられるということです。であれば、検査を受ける人の反応も千差万別に異なる訳で、それがすなわち自由な反応ということになります。

投影法の利点

投影法の利点は以下の通り。

①回答バイアスが生じにくい

検査の意図が読み取られにくいため、自分をよく見せようとしたり、虚偽や誇張をしたりすることが困難で、回答のバイアスが生じにくい。

②無意識的側面を測定できる

被検査者の自由な反応に無意識的な側面が反映されていると考える。そのため、質問紙法では明らかにない無意識の側面の性格特徴が明らかになる。

投影法の欠点

投影法の欠点は以下の通り。

①検査者の熟練が必要

投影法の実施・結果の解釈には熟練が必要とされる。検査者の熟練によって検査結果が左右される可能性がある。

②検査者の主観が入りやすい

解釈に検査者の主観が入るため、検査者による解釈の違いが生じやすい。主観を廃するための判定基準に関しても、判定の根拠が薄弱なものが多い。

③集団実施が困難

基本的に検査者と被検査者の1対1で行うことが多い。

④被検査者の負担

被検査者は何を測られているかわからないため、不安を抱きやすい。選択肢ではなく、自由な回答を求められるため、心理的な負担も大きい。

⑤言語能力に依存

反応として言語報告をするものが多いため、投影法で被検査者に一定の言語能力が必要となる。

投影法の代表例

投影法の代表例には以下の通り。

ロールシャッハ・テスト

ロールシャッハが開発したテスト。左右対称のインクの染みが何に見えるか答えてもらい。その反応内容を分析するテスト。図版は白黒5枚、カラー5枚。判定方式としては、包括システムが普及しているが、日本では伝統的に片口法という判定方式が用いられることも多い。これは、片口安史(かたぐちやすふみ)がロールシャッハテストを用いた心理診断のための解析方法を確立したことによる。

下記動画があったので、理解を深めるとともに、強化子として活用するために拝借させていただきました。眉唾感はあるけど楽しみながら学習できると思います。
https://www.youtube.com/embed/y4BXf8gWuYg

TAT(主題統覚検査)

主題統覚検査は、マレーとモーガンが開発した。絵から自由に物語を創作してもらい、創作された物語の主人公の行動に被検査者の欲求が、主人公の周囲で起きる出来事に被検査者が環境から受ける圧力が、それぞれ反映されていると考える。(欲求ー圧力理論

P-Fスタディ

ローゼンツァイクが開発した。欲求不満場面が描かれたマンガのような絵の吹き出しに、自由にセリフを書き入れてもらい、それを分析する。

SCT(文章完成法)

不完全な文章が提示され、その文章の続きを完成させる検査。投影法ではあるが、意識的な側面が反映されやすい。また、回答の歪みが生じやすいなどの特徴がある。

描画法

 描画法とは、被検査者に絵を描いてもらい、その絵を分析することで被検査者の性格特性を把握しようとする投影法の1つ。言語能力に依存しないため、言語表出が困難な対象に有効である。ただし、絵の分析には熟練が必要で、分析者の主観が入りやすいため、テストバッテリーの1つとして用いるのが望ましい。代表例には、以下の様なテストがある。

人物画テスト

人物像を描いてもらうことによって、被験者の発達の程度や性格特性を測定る描画法を広く人物画テストと呼ぶ。代表的なものに、DAMとDAPがある。人物画を最初に性格検査として用いたのは、マッコーバー。日本で標準化されているのは、DAMであり、「人をひとり描いてください」と教示し、男性像のみを採点の対象とする。

バウムテスト

バウムテストとは、コッホにより開発された、投影法の1つ。標準的な実施方法は、A4の用紙に4Bの鉛筆で「実のなる木を1本描いてください」という教示のもとに行われる。描かれた1本の木をその人の自己像とみなし、大きさ、形、バランスなどから被検査者の特徴を推測する。あくまで補助的な理解にすぎず、テストバッテリーの1つとして用いられる。

HTPテスト

HTPテストは、バックにより開発されたテストで、家と木と人を描いてもらい、性格特性をさている描画法の1つ。家には家庭環境が、木には無意識的な自己像が、人には現実的な自己像がそれぞれ反映されやすい。HTPテストは、実施が容易である一方、解釈に熟練を要するため、結果の客観性と信頼性に問題がある。

風景構成法

風景構成法とは、1枚の紙に風景を描いてもらう芸術療法の1つであり、中井久夫によって開発され、のちに投影法としても用いられる様になった。もともとは、統合失調症患者と言語交流を補うために創案された。投影法の中でも描画者の自由度が高く、検査者に評定の客観性が低いという性質から、解釈が標準化されていないのが特徴。

動的家族画

バーンズとカウフマンが開発した描画法の1つ。被検査者に家族が何かしているところを描いてもらう。家族画には、個人の性格のみならず、家族間の関係性や対人関係の態度が投影されると考える。家族成員同士で画を見せ合うことで、家族集団全体の力動性を知ることも可能。

投影法の分類

以上、投影法の具体例を列挙してきましたが、この代表的な分類法にフランクの分類があります。

フランクの投影法分類

全部で5つですね。構成法は、ロールシャッハのように、形が曖昧だったり、構造化されていない素材に意味を与える検査です。解釈法、TATなどのように、解釈を必要とする検査です。洗浄法は、刺激が表す具体的状況に対する反応を観察する検査です。心理劇はここに分類されるようですが、心理療法としてのみならず検査の際にも用いられるということですね。組立法は、個々の部分的な素材を組み立てることで、意味ある形を作りあげる検査。これは、よく幼児の検査で使われます。歪曲法は、表出された言語や文字などの反応を分析する検査のこと。

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