事例研究法についての定義、意義、問題点についてまとめました。
エビデンスベースドアプローチも交えて解説してます。
事例研究とは(定義)
事例研究とは、1事例、または、少数事例について、各事例の個別性を尊重し、その個性を研究していく方法をいう。
事例研究の位置付け
心理学研究には、独自的なものの理解を目指す、個性記述的研究(idograhphic)と、普遍的なものの説明を目指す、法則定立的研究(nomothetic)があり、事例研究は、個性記述的研究にあたる。
ちなみに、法則定立的研究は量的研究が、個性記述的研究には質的研究がそれぞれ対応している。
事例研究のメリット
臨床心理学研究では、一般性といっても、普遍的法則の定立を目指すのではなく、特定の事例の現実を理解するために有効なモデルを構成することが目的となる。そして、事例研究はこのようなモデルを構成するための研究法であり、それこそが事例研究の意義でということになる。
具体的には、クライエントへの理解を深め、主観的な語りに基づいて内界を深く知ることができる点。個々の事例の経過から得られた知見が、ある治療法やパラダイムの評価見直しに繋がるなど、一般性をもち、後の、臨床に生かされる点がある。
事例研究のデメリット
第一に、研究者自身の主観的な偏りが入りやすいことがあげられる。第二に、1例ないし、少数事例のみを取り上げているので、結果の普遍性に疑問が多いことなどがある。
この問題点は、まさに事例研究が質的研究の1つであるからに他ならない。
質的研究と事例研究は、別物です。僕の誤解がありました。そもそも質的研究と事例研究はその趣旨が異なるからです。
質的研究→主に仮説生成を目的とする。
事例研究→1事例における仮説検証を目的とする。
極端な比較論ですが、一般的な両者の趣旨はこのように異なる。
「事例研究」の目的としては、次の3つの水準が想定されうる。第一の水準は、「化学の知」の方法論による検討であって、より普遍的な「事実」を発見し、検証していく方向性を持つ水準である。
(引用:臨床心理学研究法特論 p114より)
エビデンス・ベースド・アプローチ
事例研究法の問題点を補うために、エビデンスベースドアプローチがある。エビデンスベースドアプローチとは、根拠に基づいて援助を行うとする臨床心理学の新しい手法であり、エビデンスベースドアプローチは、先にあげた法則定立的研究の延長にあるものである。
エビデンスベースドアプローチは、従来の心理学に対する批判や社会的責任に対する疑問を乗り越えるものとして発展してきた。
また、事例研究とエビデンスベースドアプローチは、対立するものではない。エビデンスベースドアプローチもその根拠となるのは、個々の事例からなるデータベースであるため、相補的な関係である。
コメント