この記事では、以下のような方に向けて「分析的帰納法」についてまとめてます。
- 臨床心理系大学院生
- 質的研究に取り組んでる
- 質的研究の注意点が知りたい
- 分析的帰納法ってなに?
以上の項目に当てはまる数が多いほど、ご賞味ください。
分析的帰納法とは?
僕が理解する限りですが、分析的帰納法は「仮説検証すること」だと言えます。カウンセリングするときって、仮説検証的にクライエントさんに働きかけますよね?例えば、初回のカウンセリングに遅刻してきたという事実から「Aさんは怠け者だ」という仮説を立てたとします。しかし、これだけでは「Aさんは怠け者だ」という仮説は立証されません。
なぜか?
この仮説が立証されるためには、「Aさんは怠け者だ」という仮説を否定する事実が1つもないことを示す必要があるからです。つまり、次回のカウンセリングにおいてAさんが「時間通りに来談した」としたら、「Aさんは怠け者だ」という仮説は崩れる(保留になる)からです。
したがって、分析的帰納法は「仮説を立てて、それを立証する根拠と否定する根拠を同時に探し、仮説をブラッシュアップしていくプロセス」だと言えます。
質的分析の過程で概念間・要因間の関係が仮説的に見出された場合、その関係をデータが確かにその関係を支持しているかどうか、データに戻って検討しておかなければならない。これは、量的研究とはまた異なるかたちの「検証」にあたる。そのための手続きの1つが“分析的帰納法”であり、次のような手続きで進められる(Robinson,1951)。
(引用:質的研究の質と評価基準について)
この記事をお読みのあなたも、1度「こいつは嫌なやつだ」という思いが浮かぶと、その人のそういう所ばっかりが目についてしまうといったような経験ありませんか?
悲しいことに僕たち人間は、自分のことを正当化したいし、間違うことが嫌だし、自分のみたいものをみてしまう弱い生き物です。ですので、自分の仮説を否定する事実を探すということは、意識的に行わないとなかなかできることではありません。
しかし、こと研究となると、化学的なものですから、それが主観的であってはいけないのです。だから、質的研究の科学性を担保するための1つの手段にこの分析的帰納法が含まれているということなりましょう。(ちなみに、僕の理解では、認知再構成法もこのやり方です。)
質的研究における、分析的帰納法の位置づけ
それでは、分析的帰納法のおおまかな理解ができたところで、質的研究全体において、一体どこでその力を発揮するのか、確認しておきます。
以下の図の、赤字の部分が「分析的帰納法」を使うタイミングです。
流れとしては、左上の「集団」から、事例(研究協力者)を選定するところからはじまります。続いて、インタビューなどをして、「質的データ」を得るわけですが、その場合は「逐語記録 (音声記録)」が「質的データ」ということになるでしょう。で、それをディスコース分析なのか、M-GTAなのか、わかりませんが、分析するわけですね。その際に、導入されるのがこの「分析的帰納法」ということになるということです。
その意味は「質的研究の質を担保するため」であり、言い換えると、「導き出された結論が、化学的なものかどうか」ということです。つまり、分析的帰納法は、データ分析の段階で質的研究の質を担保するための1つの手段という位置づけになります。それは、トライアンギュレーションと並列になっていることからもお分かりいただけることかと思います。

分析的帰納法の具体的な流れ
では、最後にその具体的な流れというか、やり方について確認します。
まず説明すべき現象を暫定的に定義し、データに即してその現象について「概念間・要因間の関係」という形での説明仮説を作る。次にその仮説が別のデータと比較され、データに適しない場合には仮説を修正するか、あるいは説明すべき現象を再定義してそのデータの事例を現象から除外する。その後さらに、次のデータが仮説に照らし合わされ、同様な手順で仮説が検討される。この手続きが反復されることで、仮説がより確かなものになったり、あるいは精緻なものになったりする。
(引用:質的研究の質と評価基準について)
よくわからないという方もいると思うので、先ほどの「Aさんは怠け者だ」という例題を扱って、この定義を紐解いていくことにしたかったですが、労力的にここまでにします。
ご要望があれば、コメントください(^ω^)
続きをかくかもしれませんよ(笑)
それではまた
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