この記事は、「翻訳書を参考文献に載せる際の書きかた」についての忘備録です。
大学院で修士論文やレポートを書く際に困ったらご参考ください。
書き方に困った書籍
まず、僕が書き方に困った書籍は以下です。
この書籍のタイトルを忠実に再現すると・・・
「P・バニスター,E・バーマン,I・パーカー, M・テイラー, C・ティンダール(著),五十嵐靖博・河野哲也(監訳),田中肇・金丸隆太(訳),質的心理学研究法入門 リフレキシビティの視点,新曜社(2008)」
この様になるわけですが、まあ、このまま記載したらまずいよなあ・・・というのが事の発端です。
結論
それではお待ちかね!結論は以下の通り!!
Banister,P.,Burman,E.,Parker,I.,Taylor,M., & Tindall,C.(1994),Qualitaive methods in psychology, Open University Press.
(五十嵐靖博・河野哲也(監訳) (2008). 質的心理学研究法入門 リフレキシビティの視点 新曜社)
正直、この記載が間違いなく正解かと言われると断言できないのですが、とりあえず、現状のやまだ調べではこの表記だと考えていますが、その理由をつらつらと述べていきます。
今回の参考書の特徴
まず、この翻訳書を論文なりレポートに記載する際のポイントは以下の4点です。
- 原本が洋書である(翻訳書なので当然ですね)
- 翻訳者の記載がある
- 監訳者の記載がある
- 共著である
そして、今回、一番のネックになったのは、「4」の「共著である」という部分ですが、まずは、「1」の「原本が洋書」というところからみていくことにします。
原本が洋書の場合の記載の仕方
原本が洋書の場合の記載は、「日本心理学会の執筆の手引き」しっかりと記されています。
(原著者名),(原書籍刊行年),(原書籍名),(原書籍出版地:出版社) ((原著者名カタカナ表記)(翻訳者名)(訳),(翻訳書刊行年),(翻訳書籍名), (翻訳書出版社)
(引用:日本心理学会 執筆・投稿の手引き p45より)
で、その具体例として以下がセットで書かれてます。
Roesn, N. J. (2005). If only: How to turn regret into opportunity. New York: Broadway. (ローズ, N. J. 村田 光二(監訳)(2008).後悔を好機に変える──イフ・オン
リーの心理学── ナカニシヤ出版)
(引用:日本心理学会 執筆・投稿の手引き p45より)
これをこのまま真似して記載すればOKということになりますが、注意点が2つあります。
- 著者名は「姓」⇨「名」の順にかく
- 書籍名は「イタリック体」にする
著者名は「姓」⇨「名」の順にかく
これは、「苗字⇨名前」の順に書けよってことです。日本人の名前載せる時に、「名前⇨苗字」の順には書かないでしょ?
つまり、引用例の著者を見ると 「Rosen,N.J」さんと表記されてるので、これは「Rosen」が苗字であるとわかります。
そして、実際の書籍を見ると「Neal J. Roese」とありますから「Neal」が下の名前なんだろうと考えられます。
(執筆の手引きではRosenとなってるのは間違い?・・・)
書籍名はイタリック体で表記する
注意点の2つ目はいたってシンプルですね。翻訳書の「書籍名(タイトル)」を「イタリック体」にすればいいだけのことです。
以下の例で言えば「イタリック体」で表記されている部分は「If only: How to turn regret into opportunity.」ですから、これが「書籍名(タイトル)」ということです。
Roesn, N. J. (2005). If only: How to turn regret into opportunity. New York: Broadway. (ローズ, N. J. 村田 光二(監訳)(2008).後悔を好機に変える──イフ・オン
リーの心理学── ナカニシヤ出版)
(引用:日本心理学会 執筆・投稿の手引き p45より)
仮に、今回僕が取り上げた書籍が、単著であるとすれば、英語表記の部分に関しては以下のようになりますね。
Banister,P.(1994).Qualitaive methods in psychology, Open University Press.
翻訳書が共著である場合
しかしながら、今回ネックになっていること1つが、「共著」であるという点です。そして、共著の場合の記載のポイントは以下です。
- イニシャルの後はピリオド(.)をつける
- 同姓でイニシャルも同じ著者がいる場合はフルネームでかく
- 著者間はカンマ(,)でつなぐ
- 共著が7名以下の場合、すべての著者をかき、&でつなぐ
(1) 著者名
i) 一般的書き方 著者名は,姓を先に書き,カンマ(,)をおき,ファースト・ネーム,ミドル・ネー
ムのイニシャルの順で書く。イニシャルのあとにはピリオド(. )を付ける。もし同姓 で,イニシャルも同じ著者があるときは,名も略さずに書く。著者名の表記法は,原著 者のそれに従う。
Sato, T. (2013)., Sato, Takao (2013)., Sato, Tatsuya (2013).
(引用:日本心理学会 執筆・投稿の手引き p39より)
つまり、以下のようになります。
Banister,P.,Burman,E.,Parker,I.,Taylor,M., & Tindall,C.(1994).Qualitaive methods in psychology, Open University Press.
1つ目の注意点である「イニシャルの後はピリオド」ですが、赤色で示した部分が該当箇所です。また、今回は2つ目の注意である 「同姓でイニシャルも同じ著者がいる場合はフルネームでかく」という部分は該当箇所がありませんので特に触れません。
続いて、「共著間はカンマでつなぐ」という部分ですが、これについては、青色で示した部分です。
最後に、「共著が7名以下の場合、すべての著者をかき、&でつなぐ」という部分ですが、これはオレンジで示しました。
- ii) 共著(著者が 7 名以下) すべての著者を書き,最後の著者の前にカンマ(,)と&をおく。and と綴らぬこと。 Saiki, J., Nakazawa, J., & Sugimura, K. (2013).
日本語表記の部分について
続いて、日本語の表記箇所についてですが、具体的には下記の赤字部分についてです。
Roesn, N. J. (2005). If only: How to turn regret into opportunity. New York: Broadway. (ローズ, N. J. 村田 光二(監訳)(2008).後悔を好機に変える──イフ・オン
リーの心理学── ナカニシヤ出版)
(引用:日本心理学会 執筆・投稿の手引き p45より)
この構造は、以下の通りです。
((原著者名カタカナ表記)(翻訳者名)(訳),(翻訳書刊行年),(翻訳書籍名), (翻訳書出版社)
(引用:日本心理学会 執筆・投稿の手引き p45より)
つまり、今回僕が扱っている書籍において、仮に、原著が1名だとするならば以下のように表記すればよいかと思います。
バニスター,P. 田中肇・金丸隆太(訳)(2008). 質的心理学研究法入門 リフレキシビティの視点 新曜社
しかしながら、ここで2つの疑問があります。
- 原著が複数人の場合の区切り方は?
- 監訳がいる場合は、訳者の前とどっち?
原著が複数人の場合の区切り方は?
それでは、まず、「原著が複数人の場合の区切り方」に対する疑問についてですが、これについての結論は、「原著を書く必要がない」というのがここでの結論です。その理由として、以下の2つが挙げられます。
- この書き方についてのルールが見当たらなかった
- 実際の論文を参照すると、原著の記載がない
以上の理由からそのような結論に至ったわけですが、その前に、具体的に僕がどのように迷ったのかについて明らかにします。
赤字の部分を以下のようにするか・・・
Banister,P.,Burman,E.,Parker,I.,Taylor,M., & Tindall,C.(1994),Qualitaive methods in psychology, Open University Press.
(バニスター,P. バーマン,E. パーカー,I. テイラー,M. ティンダール,C. 五十嵐靖博・河野哲也(監訳)(2008). 質的心理学研究法入門 リフレキシビティの視点 新曜社)
それとも以下のようにすべきなのか、あるいはどちらも間違いなのかということで悩んだということです。
Banister,P.,Burman,E.,Parker,I.,Taylor,M., & Tindall,C.(1994),Qualitaive methods in psychology, Open University Press.
(バニスター,P ・ バーマン,E・ パーカー,I・ テイラー,M.・ティンダール,C. 五十嵐靖博・河野哲也(監訳) (2008). 質的心理学研究法入門 リフレキシビティの視点 新曜社)
しかし、残念ながら、この規則の記載は僕が調べた限りどこにも見当たりませんでした。そこで、グーグルスカラーに「質的心理学研究法入門 リフレキシビティの視点」などと打ち込み実際の論文の引用箇所を探ってみることにしたわけです。
実際の論文を参照すると記載がない
したがって、先ほどの2つ目の根拠に行き着くわけですが、グーグルスカラーの検索で引っかかった以下の論文をたどることにしました。
①不登校・ひきこもりへの訪問援助に関する一考察
②SEIQoL-DWの有用性と課題
まず、①の「不登校・ひきこもりへの訪問援助に関する一考察」の引用文献をみたところ、以下の様な記載がありました。
Banister, P., Burman, E., Parker, I., Taylor, M. & Tindall, C. 1994 Qualitative methods in psychology: A research guide. Berkshire, UK. Open University Press.(五十嵐靖博・河野哲也 監訳 2008 質的心 理学研究法入門―リフレキシビティの視点― 新 曜社)
(引用:不登校・ひきこもりへの訪問援助に関する一考察ー三者関係構造によるつながりの再構築ー,p17より)
先ほど僕が「赤字で示したカタカナ表記の著者名の部分」がごっそりありません。
一方、②の「SEIQoL-DWの有用性と課題」についても同様です。
Tindall, C.(1994)Personal Construct Approach. In Banister, P., Burman, E., Parker, I., Taylor, M., and Tindall, C. Qualitative Methods in Psychology: a research guide. 1st Ed. Buckingham: Open University Press.五十嵐靖博・河野哲也(監訳) (2008)「質的心理学研究法入門:リフレキシビテ ィの視点」.第5章「パーソナル・コンストラクト・アプローチ」,新曜社.(引用:SEIQoL-DWの有用性と課題 -G.A.Kellyのパーソナル・コントラクトセオリーを参照してー,p140より)
以上の情報収集結果から、僕はさとりました。「カタカナ表記の部分って、なくていんじゃね?」「誰も、そんなとこ細かく見てねんじゃね?」ということを・・・・。 ということで、日本心理学会の手引きを見る限りは記載したほうがいいのでしょうが、しかし、「共著の場合の記載の仕方がわからない」ということと「実態は、その規則に則っている人がいない」と思われるでろうことから、僕は以下の書き方を採用することにしたわけであります。ええ。
Banister,P.,Burman,E.,Parker,I.,Taylor,M., & Tindall,C.(1994),Qualitaive methods in psychology, Open University Press.(五十嵐靖博・河野哲也(監訳) 田中肇・金丸隆太(訳)(2008). 質的心理学研究法入門 リフレキシビティの視点 新曜社)
「監訳」と「訳」の表記について
では最後に、「監訳」と「訳」の表記についての疑問を解消して終わりたいと思います。疑問点は以下です。
監訳と訳の順番はどっちを先にすればいいの?
結論はすでに示していますが、
「監訳」のみ記載する。
ということで落ち着きました。
その根拠ですが、先ほど同様に以下の文献を参照すると、「訳者」については記載すらないわけですよ。ええ。
- 不登校・ひきこもりへの訪問援助に関する一考察
- SEIQoL-DWの有用性と課題
また、日本心理学会の執筆の手引きの方に限って言えば、↓↓こんな書き方してるくせに
((原著者名カタカナ表記)(翻訳者名)(訳),(翻訳書刊行年),(翻訳書籍名), (翻訳書出版社)
(引用:日本心理学会 執筆・投稿の手引き p45より)
具体例では、↓↓「監訳」しかいないわけです。ええ。紛らわしい書き方しやがって
Roesn, N. J. (2005). If only: How to turn regret into opportunity. New York: Broadway. (ローズ, N. J. 村田 光二(監訳)(2008).後悔を好機に変える──イフ・オン
リーの心理学── ナカニシヤ出版)
(引用:日本心理学会 執筆・投稿の手引き p45より)
と、いうことで、「大事なのは『監訳』なんだな」ということを思いまして、記載するのは「監訳」だけにしたというわけです。ええ。
参考
①日本心理学会 執筆の手引き
コメント
有料パート感想希望。
お願いします。
>フジタさん
コメントありがとうございます。
PWをお送りしました。
ご確認ください(^^ゞ
丁寧にまとめてあり、大変参考になりました。
ありがとうございました。