心理学で用いられる”強化子”についてこのエントリーでは掘り下げてみます
このエントリーは、スキナーのオペラント条件づけなる理論を前提としているので
まずそちらをよく理解してから読むことをお勧めします。
強化とは何か?
強化子を理解するためには、まず”強化”という概念を知っておく必要があります
テクニックや一般的な意味合いで強化という用語を使用する場合、それは行動の強さに影響を与える(増加あるいは減少させる)すべての結果や随伴性のことを意味する。強化の定義は機能的な定義なのである。すなわち、何かが行動の強さを増加させたり減少させたりするのに影響を与えたということをもって初めて、それは強化子として定義される。
(引用:機能分析的心理療法より)
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つまり、”強化”とは、人の行動を増加ないし、減少させるための一連のプロセスをいうわけですね。
強化子について
それでは本題に戻りますが
強化子(=強化刺激)の定義を別の書籍から拾うと次のように述べられています。
強化刺激とは、行動が生じたことでもたらされる直後の結果や環境の変化のうち、その後、その行動が生起する確率を高める働きをするものである、といい言い換えることができる。
(引用:応用行動分析入門学より)
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ということは、
ある行動の生起頻度が高まることによって初めてそれを”強化子”と呼べるということになりますが、分かりやすく言えば、ある個人にとって快刺激をもたらす事象ないし物体がそれですね。
そして、強化子は次のように、一次性と二次性があります。
ざっくり言うとね
一次性・・・水、食べ物、寝る、歩く
二次性・・・母からの微笑み、褒め言葉、拍手(後天的な環境によって、強化子にも弱化子にもなる)
摂取制限
ただ、
強化子を操作する場合、1つ注意を払っておかねばならないことがあります。
強化子は、快刺激をもたらす事物とは言ったものの
いつ何時も同じ強化子が快刺激をもたらすとは限らないということです。
お腹が空いた時のように、しばらくの間、ある強化刺激(この場合は食事)が与えられなかった状態を、その強化刺激の「摂取制限」を受けた状態と言う。強化刺激は、摂取制限がないと強化力をもたない。例えば、お腹いっぱい食べたときには食事は強化力を持たず、散歩などが強化力を持つ。逆に、散歩から帰ったばかりの時には、散歩は強化力をもたず食事が強化力を持つ。どの強化刺激が強化力を持つのかは、その時点の摂取制限の程度による。
(引用:応用行動分析入門学)
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この”摂取制限”という概念は、”遮断化”とも言い、これに関連して”飽和化”という概念も存在すします。
飽和化とは、価値のある事物が蔓延した状態を言います
例えば、現代は物が溢れすぎているため、飽和化している状態にあるが、これを震災前後で比較するとわかりやすいですね。
下の表は、飽和化(=震災前)と遮断化(=震災後)の例を三項随伴性(ABC分析)に当てはめたものです。
震災前、つまり、普通の状態ではコンビニに行けば”水が購入できる”というのは、至極当然のこと。
なので、”水が買える”という結果は強化子にはなり得ません。
しかし、これが震災後となれば、意味が変わってきますよね?
店頭から水が消え失せるため、たまたま入ったコンビニでもし水が買えようものなら、間違いなくそのコンビニに足を運ぶ回数は増えるでしょう。
つまり、”水が買える”という事象が”強化子”として機能していることになります。
条件性強化
続いては、条件性強化という概念について説明しておくが、そのためには、”条件性強化子”と”確率化刺激”について知っておく必要がある。
条件性強化子
条件性強化子とは、”使い方を学習することで初めて強化子となる物”のことを意味する。例えば、電池などがその具体例に該当するが、懐中電灯や時計などに電池をセットして動作させることを学習すると、それらの使用のために電池が必要だと気づく。故に、そのような機器を使用するためには、”電池”という発話をせねばならないので、それすなわち、条件性強化子により増加する要求言語(マンド)ということになる。
確率化刺激
一方、確立化刺激(懐中電灯)とは、条件性強化子(電池)の効力を決定づける刺激のことを言う。例えば、電池それ自体に強化子としての機能はないが、その先に”懐中電灯を使う(確立化刺激)”という目的があるからこそ、電池が強化子として機能させることができるわけだ。そのため、要求さえあれば、時計、ボイスレコーダー、ラジコンetc・・電池で動くものならなんでも確立化刺激に成りうるということだ。
般性強化
続いては、般化性強化について説明しますが、これはタクト(叙述性言語行動)に関係してくる強化であるため、合わせてリンク先の記事↓↓を読むのがお勧めです
般性強化子とは
定義は以下の通り。
「犬」や「犬だ」などの叙述言語行動を強化する「そうだね」のような強化刺激を「般性強化刺激」と言う。般性強化刺激とは、様々な条件性強化刺激や、一次性強化刺激と結びつくことによって、恒常的な強化力をもつ様になった条件性強化刺激のことである。子供に対して母親が「そうだね」と言った時には、身体接触や微笑みなど一次性強化刺激が与えられるだけでなく、母親の注目などの条件性強化刺激が伴う。
(引用:応用行動分析入門より)
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因みに、母親の笑みを一次性強化子とするか二次性強化子とするかは争いのあるところだと思うが、とにかく条件性強化子と一次性強化子が錯綜した強化子を般性強化子と呼ぶということだ。
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