この記事では、共同注意の基盤をなす「三項関係」についての僕の理解をまとめておきます。
- 三項関係についての世に出回ってる情報がわかりづらい
- 二項関係との違いについても知りたい
↑↑こんなことを思ってる方はお読みください(/・ω・)/
結論
結論からいうと、三項関係とは「あなた・私で、ある対象を通じて、経験を共有すること」だと考えられます。
三項関係、つまり「自分」「他者」「対象」の三項の関係で対象に対する注意を自分と他者が共有することによってできる関係
(引用:自閉症児の三項関係の成立過程ーシャボン玉を用いた介入の効果の検討,p59【要旨】1-2行目よりー)
つまり、この三項関係は、「あなた&私」の二項関係と「あなた&物」の二項関係から成立しています。
そのため、それらの二項関係を統合する力が必要になりますが。その力こそが、「共同注意」なのです。
三項関係を図解してみました
それでは、この三項関係を、二項関係も踏まえつつ、「三項関係の成立」と「不成立」を比較しながら、図解してみます(´ω`*)
パターン①~三項関係の成立~
まず、三項関係が成立している場合です。
これこそが「三項関係」が成立している例だと言えます。
なぜなら、「りんご」という対象に対して、「あなた」と「わたし」の注意を共有しているからです。
パターン②~対象となるりんごが共有されていない~
次に、三項関係が不成立のパターンです。
これが不成立の理由は、「共有している対象」が、「わたし」と「あなた」で異なるからです。 「あなた」は、指をみてますが、「わたし」は「りんご」をみていたとしたら、「対象」への注意を共有できていないですよね?
このパターンは、自閉症児を相手にしているとよくある気がします。
これは誤学習も影響してると思われます(;^ω^)
パターン③~「りんご」と「あなた」の二項関係が成立していない
続いても、三項関係が不成立のパターンです。
この場合は、「あなた」と「わたし」の二項関係は成立していますが、「あなた」と「りんご」の二項関係が成立していないと言えます。
「何も共有されていない」という点でパターン②とはまた異なります。
パターン④~「あなた」と「わたし」の二項関係が成立していない~
この場合、「りんご」と「あなた」の二項関係は成立していると言えます。
このパターンは重度自閉症の子どもに特に多い印象です。
この場合、そもそも「アレみて」といわずに「りんご」をみていることがほとんどだったりします。
「みている」とすれば、それは興味があるからみているわけです。
逆に言えば、「対象」が興味のない場合、次に紹介する「パターン⑤」のような状態になります。
パターン⑤~どの二項関係も成立していない~
この場合は、三項関係どころか、二項関係すらも成立していないと言えます。
なので、紹介したパターンとしては、最も深刻ということになるかもしれません。
ただ、自閉症の子の場合、「りんご」ではなくて、対象が興味のあるものであれば、スライドでいうところの「物」と「あなた」の二項関係は成立する場合があります。
パターン④になり得るということですね。
以上のパターンを踏まえると、どれか1つに当てはめるのではなく、どれもあり得るという考えが適切だと考えられます。
例えば、「対象」が「りんご」ではなくて「絵本」だったら「注意がむく」みたいなことですね。
それでは、以上を踏まえ「二項関係」と「三項関係」の性質をもう少し整理してみます。
二項関係と三項関係を比べてみた
この結論を言葉で完結にするのは難しいので、↓↓こちらの表をご覧ください。
この表を踏まえ、2つの二項関係を基盤にして三項関係について考えていきます。
二項関係①~「人ー人」の関係~
まずは、「人ー人」の二項関係です。
この二項関係は、生後0-4ヵ月ごろに発達すると言われています。
また、「目合わせ」のような「双方向的」なやりとりが特徴です。
「人ー人」の二項関係の場合は、それぞれが能動的に関わる能力を持つ行為主体者同士であるため双方向のコミュニケーション通路がある
(引用:共同注意ーその発達と障害をめぐる諸問題ー,p147 左段落9-12行目より)
二項関係②~「人ー物」の関係~
次に、「人ー物」の二項関係です。
この二項関係は、生後5-9ヵ月ごろに発達すると言われています。
また、「人」から「物」への、「一方向的」な関わりが特徴です。
「乳児が生後6ヶ月になれば、玩具に手を伸ばして掴み、音を出したり、わざと落として眺めたり、自分で操作できる事物の世界に関心を持って探索し始める。これは「人ー物」からなる二項関係である。
(引用:共同注意ーその発達と障害をめぐる諸問題ー, p147 左段落 2-5行目より)
三項関係~2つの二項関係を統合~
最後に、三項関係です。
すでに述べた通り、「人ー人」と「人ー物」といった2つの二項関係を統合したものが三項関係なわけです。
したがって、三項関係の特徴は、「双方向的」でもあり「一方向的」でもあるということになります。
「この時期にみられる「人ー人」、「人ー物」という2つの二項関係はまだ統合されず、どちらかの関係しかつくることができないが、(中略)その後の三項関係における共同注意の成立のための発達的基盤となる。
(引用:共同注意ーその発達と障害をめぐる諸問題ー,P147 左段落 16-21行目より)
三項関係の具体例は、すでに述べた通りですが、ボール遊びだったり、絵本だったり、シャボン玉だったり、積み木などあらゆるものがあるということになりますよね。
つまり、赤ちゃん(私)がお母さん(他者)にボール(対象)を転がして、またお母さんも受け取ったボールを赤ちゃんに転がしあうといった私ー他者ー対象の三項のやりとりを三項関係と言う。
(引用:自閉症児の三項関係の成立過程ーシャボン玉を用いた介入の効果の検討,p60 下から6-11行目より)
三項関係の発達経過まとめ
最後に、今回の記事の内容を踏まえ、三項関係の発達のプロセスを時系列にまとめておきます。
↓↓こんな感じ
ここに、「共同注意」の発達経過を付け加えると↓↓こうなる。
視覚的共同注意の発達についてもう少し詳しく知りたい方は
↓↓こちらをご参考ください。
「幾何学的メカニズム」とか「空間表象メカニズム」とかよくわからんと思うので。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
最後に、本記事の内容をまとめてお別れです(´ω`*)
- 三項関係とは「あなたと私で、ある対象を通じて、経験を共有すること」だと言える
- 三項関係の成立を捉えるためには、三項関係の不成立と比較すると良い
- 三項関係は、「人ー人」「人ー物」の二項関係を統合した関係だと言える
- 二項関係は、生後0ヵ月~9ヵ月、三項関係は,10ヵ月~14ヵ月ごろに発達する
ということなんですね~
それではまた(^^ゞ
引用文献
①自閉症児の三項関係の成立過程ーシャボン玉を用いた介入の効果の検討
参考文献
①「心の理論」成立までの三項関係の発達に関する理論的考察 : 自閉症の諸症状と関連して
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