こちらの記事では、「復帰抑制」という用語について、僕の理解をまとめておきます。
学習のお供としてお役立てください。
結論~復帰抑制とは~
復帰抑制とは、「1度むけた注意が同じ位置にもう1度向きにくくなる現象」というのが僕の理解です。
もう少し学術的に言うと「てがかりが提示されてから、ターゲットが提示されるまでの時間が、0.3秒以上の場合、0.3秒未満に比べると遅くなる現象」ということのようです。
一応、根拠は以下。
「SOAが300ms以上の条件では手がかりが提示された位置での検出がそうでない場合にくらべて遅延する。Posner & Cohen(1984)はこの遅延効果を復帰抑制とよび、先行して注意を向けた位置に再び注意を向けることを抑制することで新奇な位置に対して注意が向けられ、効率よく視空間の中から情報を獲得するためのメカニズムの一つであると説明した。」
(引用:復帰抑制と注意の慣性による促進効果より)
わかりづらいのでもう1つ。
「復帰抑制とは、“過去に注意が向けられた、位置またはオブジェクトに生じる抑制現象”を指す」
(引用: 視覚探索における復帰の抑制より)
ただ、言葉で説明すると、こういうことなのですが、なかなかわかりづらい概念なので、具体例をみながら理解を深めたいと思います。
復帰抑制の根拠~ポズナーの実験~
この「復帰抑制」という現象を説明しているのが、Posner & Cohen(1984)によって行われた、3つのボックス課題です。
説明するとわかりづらいので、スライドにまとめておきます。
おわかりいただけたでしょうか?
この現象が、「復帰抑制」です。
復帰抑制が起きる理由は、ボックスが光ってから0.3秒以上経過すると、一度右のボックスに向いた注意が、中央にボックスに戻ってしまうからということなのだそうです。
なぜそのようなことが起きるのか?
という疑問についての解釈は、↓↓進化論的なものが有力のようですね。
大昔、われわれの祖先がジャングルに生きていた頃ならば、適を迅速に発見することが生存に密接に関わっていたはずである。ゆえに、より効率的に危険な事態を発見するメカニズムが必要となる。このとき、視野内をできるだけ効率的にくまなく探索をしようとすれば、以前に一度注意を向けるほうがより効率的に異常事態を発見できる可能性が高い。つまり、できるだけ最近チェックしていない場所から優先的にチェックをしていったほうが、より重要な出来事に遭遇する確率は高くなるであろう。そのような未探索の場所に対して優先的に探索を行うようにするために、直前に注意を向けた位置を抑制することで注意を向けにくくするメカニズムが「復帰の抑制」である。
引用:マジックにだまされるのはなぜか 「注意」の認知心理学,p139より
逆に、0.3秒未満の場合に復帰抑制が生じないのは、右のボックスに注意がむいたままの状態で「ターゲット」が出現するからということなんですね(^ω^)
以下がこの3つのボックス課題の説明です。
Posner & Cohen(1984)は先行手がかり課題と呼ばれる手続きを用いて検討した。彼らの実験では、視野の左右および中心に3個のボックスが提示され、左右どちらかのボックス内にターゲット刺激が出現した。被験者には、ターゲットを検出したら出来るだけ早くキーを押して反応するように求めた。ターゲットの出現に先行して、てがかり刺激として左右どちらかのボックスの枠の輝度が上昇した。(中略)手がかり刺激が提示されたボックス内にターゲットが出現した場合には、その反対側に出現した場合と比較して検出反応時間の減少が生じた。
引用:空間的注意によって生じる主観的な視知覚の変化,pp25-26より
ちなみに、復帰抑制は、「外発的注意」のみに生じる現象のようなので、外発的注意についてもっと詳しく知りた方は↓↓こちら
まとめ
それでは、最後に今回の内容をまとめておわかれです。
- 復帰抑制とは、「1度向いた注意が、 同じ位置にもう1度向きにくくなる現象」のこと
- 復帰抑制を説明する実験には、Posner & Cohenの3つのボックス課題がある
- 復帰抑制は、「外発的注意」において確認されている
ということですね~
それではまた(^^ゞ
この記事を書くために目を通した文献
⑤マジックにだまされるのはなぜか
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