今回のエントリーは、心理学的な観点から”記憶”の種類やメカニズムを理解し、日常生活に役立てようというのが趣旨。
心理学では、「記名・保持・想起」これらの総称を”記憶”と呼びます。
もしあなたが、覚えたいことが定着しないなどの問題を抱えてるのであれば、この”記憶”の種類とメカニズムを理解するとよいでしょう。
なぜなら、どの箇所に問題があるかにによって対処法が異なるからです。
つまり、記憶の種類とメカニズムを知ることは、”記憶力”の向上に大きく役立つと言えます。
そこで参考になるのが、上記のTED記事。
【動画の要点まとめ】
- 記憶の達人は”左脳より右脳”を使ってる
- 記憶の達人は”意味づけ”が得意
- それらを集約した”場所法”って術がある
記憶の構造について
正しい記憶方法を実践するためには、記憶の全容を理解する必要がある。なので最初にその解説をしておく。記憶という概念を心理学的に捉えると、①記名②保持③想起と大まかに3段階存在するとされる。つまり、この3つの総称を記憶と言う。また、②の保持は、②短期記憶③長期記憶と、情報を保持できる時間に応じて2層に分類される。
①記名(符号化)
記憶対象を保持するための準備段階で、”注意を向ける”フェーズ。これは習うより慣れろだと思う。ここから先の文章を読まずに一旦、あなたの周囲を見回して欲しい。それでは質問です。あなたの周囲に、「”青い物体は”いくつあったでしょうか?」おそらくこれに答えられる人はいないと思う。なぜか?注意を向けてなかったからだ。つまり、人間には、視界では捉えられてもそれを意識できてないという特性があり、それに気づくことがまず記憶を理解する入口となる。
②保持(貯蔵)
冒頭の繰り返しになるが、このフェーズは更に短期記憶と長期記憶に分類することができ、記憶のたどる過程もこの順序となる。つまり、記名で注意を向けた情報はこの短期記憶で一時保管されるという意味。ただし、この短期記憶の特性として、①情報を保管しておける時間が30秒程度。②保管しておける情報は7つ前後。だと考えられている。だとすれば、一度あった人の名前を、後日思い出さなければいけない時には向いてない。あるいは、顧客から得た情報を誰かに伝えようとして、思い出したい時には向かない。一方で、長期記憶には、保存容量が無制限という特性がある。そのため、先にあげた情報を保存するならこの長期記憶が圧倒的に向いている。
③想起(検索)
このフェーズは、保存した情報を倉庫から引っ張り出してくることだ。故に、”思い出す”作業がここに該当する。ここで押さえて抑えておくべき点は、ある情報を想起するためには、そのための”手がかり”が必要になるという事。例えば、あなたが、単語”A” の定義”X”を必死に暗記したとしよう。この定義Xを想起するためには、手がかり”A”が必要という事だ。
情報を長期記憶に移行させる手順
ここまでの説明が伝わったのであれば、情報を短期記憶に移行するためには、記名(情報に注意を向ける)をすればいいという点は理解できたと思う。では、短期記憶から長期記憶に移行させるためにはどうすればいいのか?この方法は2つある。1つは、情報をひたすら繰り返す(これを維持リハーサルという)。この繰り返す行為をする際に、口に出したり、書かせたりする指導者がいるが、これは”口の動き”や”手の動き”が想起の”手がかり”になるという意味では正しい。そして、2つ目は、精緻化だ。”意味づけ”という言い方をするとわかりやすいかもしれない。例えば、鎌倉幕府の年ごを覚えるのに、”いい国(1192)作ろう”という語呂を使うことや、物事の結果だけを暗記するのではなく、その”理由”や”背景”などを知る方法がある。そしてこのエントリーでは、この”意味づけ”を何より重視してる。ありがちなのは、一生懸命勉強して情報を定着させたつもが、復習したら思い出せないという事態。この原因は複数あるが、僕の場合、言葉の維持リハーサルのみに頼っていた点があげられる。もちろん、意味づけの存在に気づいてはいたが、意識的に時間を費やしてはこなかった。しかし、この意味づけに時間を使うことで復習の時間が圧倒的に削減される。例えるなら、人生ゲームでスタート地点に戻された人と、そうでない人とでは、ゴールにたどり着く早さが異なるだろう。この意味づけを使いこなせれば、あなたは、”スタート地点に戻されずにゲームを進める権利”を手にする事ができる。
ある心理学実験
ある心理学者がこんな実験を行った。記憶力の優れた人vs記憶力普通の人で、ある暗記課題を遂行して貰い、その点数を比較する至って普通のテスト。ただし、暗記課題は2つ用意し内容は以下の通り(実際の内容とは異なるが・・・)
テスト①以下の数字を覚えなさい(意味のない羅列)
3.14159265359
テスト②以下の数字を覚えなさい(意味のある羅列)
0120-33-0843(朝日が、さんさん、おはよーさん)
結果は、①のテストの場合、記憶力の優れた人の点数がよかった。しかし、②のテストの場合、なんと2者間でテストの点数に大きな差はなかった。実際の試験内容は異なるが、ここでの違いは、数字の羅列に意味があるかないかだけ。つまり、記憶の達人を再定義するなら、無意味な情報の羅列に意味づけする天才”と言い換えることができる。これが、TEDの動画でも説明されていた”baker理論”と同じだと気づいたなら、あなたはこの先の文章を読む必要がない。なぜなら、記憶力に優れた人間と僕のような普通の人間との差はその技術に長けているかどうかだからだ。もちろんスキルを洗練する必要はあるが、人生は記憶の連続だと考えれば、一度身につければ一生物。そこで、最後に僕がピックアップした記憶術を紹介したい。
記憶術
僕が読んだ書籍には複数の記憶術が書かれているが、その中から使える物だけピックアップした。実践してるのはこの3つだけで、他の余計な情報を取り込む必要はない。詳しい説明は、専門書にゆずるが概要だけ記しておく。
①関係法
Aという情報からXを想起したい場合、AとXの関連性が薄くなかなか記憶できない時に”B”という仲介を挟む方法。つまり、A→B→Xという順で、AからBを想起しそのBからXを想起する。
②物語法
記憶したい情報がA-Xまである場合に、それらの情報を使い物語を作る方法。この時の注意点は、具体的にイメージできる物語を作ること。デメリットは、物語を作らなければならない点。
③ペグ法(場所法)
絶対に習得すべき記憶法。僕の経験談でしかないが、記憶の定着率が全く違う。動画で紹介してるのもこの記憶術。
この方法は、通学路や、職場への道のりにある”目印”に、記憶したい情報を紐つける記憶術。物語法と違い、ストーリーを作る必要がない点にメリットがある。例えば、自転車置き場→dog、銅像→cat、コンビニ→flower、などに想起したい単語を結びつける。とは言え、自転車置き場→dogだと無理があるため、①の関係法を活用する必要がある。
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