この記事は、以下のような方向けです。
- 「質的研究を大学院でやりたい」
- 「質的研究を、今まさに計画している」
定性的コーディングとは
まずはその定義から確認しておきます。
質的データ分析の最初の手続きは、コーディング、つまり文字テキストデータに対して一種の小見出しをつけてゆく作業である。
(引用:質的データ分析法,新曜社より)
では、コーディングってなんなのでしょうか?
「コーディング」と言われてピンとくる方はいるのでしょうか?
これは量的研究にしろ質的研究にしろ共通して行われるタスクのことで、「収集したデータをコンパクトなサイズに圧縮すること」なんだそうです。
コーディングの意義
なので、コーディングをすることのメリットというか、意義は、何百文字とある逐語記録を、10文字とかそこらの小見出し(言葉)に置き換えることで、そのデータを扱いやすくするってことになりますね。
要は、その「機能」に関して言えば、「ことわざ」や「四字熟語」と同じですよね。
例えば、「物事が思うようにいかず、もどかしいこと。あるいは、回りくどくて効果が得られないこと」を「2階から目薬」と言いますよね。
これによって。
- 「41文字」⇨「9文字」
と、文字数が一気にコンパクトになりました。
あるいは、僕らはなにを勉強するとき「概念」から入って、で、テストを受けるときには、概念を答えさせられたりしますよね?
「以下の内容を心理学用語でなんというか?」的な問題ですね。
自分と特定の相手がその関係性に過剰に依存しており、その人間関係に囚われている関係への嗜癖状態を指す。すなわち「人を世話・介護することへの愛情=依存」と「愛情という名の支配=自己満足」である。
(引用:Wikipediaより)
答えは、「共依存」ですが、まあ答えなんてここではどうでもよく、これにより約100文字がわずか「3文字」に圧縮されている。ということですね。注目して欲しいのは。
これがコーディングの利点というわけです。
定性的コーディングの手続き
ただし、僕らが何かを学ぶときは、このようにすでにある概念を記憶していくということが目的ですが、コーディングでは、僕らが新しい概念を付与していくことになります。
定性的コーディングを行う場合には、まずフィールドノーツや聞き取り記録を始めから終わりまで何度も読み返しながら、その余白の部分などに思いつくままにコードを「小見出し」のような形で書き込んでいく作業から始まることが多い。
このようにしてつけられた、それらの小見出しを相互に比較したり、小見出しがつけられている文章の箇所、これを「文書セグメント」あるいは単に「セグメント」と呼ぶ。
(引用:質的データ分析法,新曜社より)
質的研究では、逐語記録から一部を抜き出して小見出しをつけるといった作業をひたすら行い分析を進めていくわけです。
しかし、先ほど挙げた「2階から目薬」とか「共依存」という言葉は、すでに概念として仕上がったものですが、ここで述べられている「小見出し」というものは、「概念」に至る前段階のものだと考えられます。「切り取った部分の逐語記録を端的に表した箇条書き的な情報」のようなもをイメージするといいかもしれません。
そして、この小見出しをつける作業が完了したら、今度は、それぞれを見比べ、共通点や違いを探っていくことになります。そのような絶え間ない分析を通して、「概念的カテゴリー」が出来上がっていきます。このような作業が質的研究においてなされるようですが、これはまさしく概念化ということでしょう。
参考書
「小見出し」の具体例がみたい方は、ぜひこちらの書籍を参照ください。
コメント