この記事は、僕が大学院時代にレポートを書く際にまとめた愛着障害についての内容です。
今読むと、なんとも中途半端な理解という感じですが、後で見返すために忘備録としてのこしてます。
- 愛着障害ってどんな障害?
- 反応性愛着障害と脱抑制型対人交流障害の違いは?
という疑問のある方の参考になるかもしれません。
愛着障害とは
結論からいきましょう。
愛着障害とは、幼い頃に不適切な養育を受けたことが理由で、養育者との愛着が築けず、それが幼児期以降のこころのコントロールに問題を起こしてしまう障害のことを言います。
そして、愛着障害はDSM-5において「心的外傷およびストレス因関連障害群」に該当し、「反応性アタッチメント障害」と「脱抑制型対人交流障害」の2つに分類されています。
下図の赤枠部分ですね。
反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
以下に記載のある「抑制型」という表記は、この分類に該当するかと思われます。
抑制型は世話をしようとしている人に対して、非常に警戒的で、甘えたいのに素直に甘えることができず、優しく接してくれているのに腹を立てたり嫌がって泣いたりとまったく矛盾した態度をみせることがあります。
(引用:障害臨床学ハンドブック第2版,p141より)
「該当すると思われます」という言い回しをしたのは、この説明が「DSM-3」についての記述で少しばかり古いものであるからですね。
一方、最新の診断基準である「DSM-5」では以下のような記載があります。
B.以下のうち少なくとも2つによって特徴づけられる持続的な対人交流と情動の障害
(1)他者に対する最小限の対人交流と情動の反応
(2)制限された陽性の感情
(3)大人の養育者との威嚇的でない交流の間でも、説明できない明らかないらだたしさ、悲しみ、また恐怖のエピソードがある。
(引用:DSM-5精神疾患の分類と診断の手引より)
※引用の具体的なページ番号などが知りたい方はこちら
この診断基準と先ほど引用部分との照らし合わせをすると、
「(1)他者に対する最小限の対人交流と情動の反応」という項目は、「世話をしようとしている人に対して、非常に警戒的」という部分が合致していると考えられますね。そして、これはアタッチメントタイプの「回避型」だと推察されます。
次に、「(2)制限された陽性の感情」という項目が、「腹を立てたり嫌がって泣いたりとまったく矛盾した態度」という文言に該当する部分だと考えられます。そうすると、これはアタッチメントタイプの「アンビバレント型」と「無秩序型」に該当すると言えそうですね。
脱抑制型対人交流障害
一方で、脱抑制型については、以下のようにあります。
脱抑制型は初対面の人にもなれなれしく接近し、過剰な親しみを示し、一見社交的に見えるのですが、無警戒で相手をよく吟味しようとしません。これらの障害は子どもの基本的な情緒的・身体的欲求の無視や、養育者の頻繁な交代といった安定した愛着形成の阻害という病的療育によって生じるとされています。
(引用:障害臨床学ハンドブック第2版,p141より)
それでは、これをDSM-5と照らし合わせるとどうなのでしょうか?
A.以下のうち少なくとも2つによって示される、見慣れない大人に積極的に近づき交流する子どもの行動様式:
(1)見慣れない大人に近づき交流することへのためらいの減少または欠如
(2)過度に馴れ馴れしい言語的または身体的行動(文化的に認められた、年齢相応の社会的規範を逸脱している)
(3)たとえ不慣れな状況であっても、遠くに離れて行った後に大人の養育者を振り返って確認することの減少または欠如
(4)最小限に、または何のためらいもなく、見慣れない大人に進んでついて行こうとする。
(引用:DSM-5精神疾患の分類と診断の手引)
※引用の具体的なページ番号などが知りたい方はこちら
なんというか、概ね一致しているという印象です。ということは、DSM-3からDSM-5に到るまでは、愛着障害の基準は大きく変わってないということが言えそうですね。
反応性愛着障害と脱抑制型対人交流障害の違いは!?
ここまでで、愛着障害には、「反応性愛着障害」と「脱抑制型対人交流障害」の2つがあるのだということがわかりましたが、改めてその違いを整理しておくと、両者の違いは「愛着の対象があるかないか」ということです。この見解は、ジーナーさんらによる「愛着障害の臨床像」の検討に基づいています。
ジーナーら(Zeanah,C.,et al.,1993)は愛着障害の臨床像を詳細に検討し、「選択的愛着をもたない障害」、「安全基地の歪み」、「中断された愛着障害」に分類しました。
(引用:障害臨床学ハンドブック第2版,p141より)
これを体系図にすると以下の通りですね。ただし、ジーナーさんは発達心理学的な観点から物を言ってる人で、DSM-5は精神医学的な話なので、それらを統合するとこうなるんではないかと言う僕の個人的な見解だということを大前提としてご了承ください。
ただし、それはこの体系図に限ってのことで、「反応性愛着障害」と「脱抑制型対人交流障害」の違いは「愛着の対象を持つか持たないか」という結論部分についてではありません。その根拠部分は以下です。
「選択的愛着をもたない障害」は従来の反応性愛着障害に相当し、愛着対象をもっていません。
(引用:障害臨床学ハンドブック第2版,p141より)
一方で、脱抑制型対人交流障害が、「愛着対象をもつ」と結論づける根拠は以下にあります。
「安全基地行動の歪み」は一応、愛着対象をもち、以下の4つの下位分類、①愛着対象を顧みずに探索し危険な行動をとる愛着、②探索せず不安で愛着対象にしがみついている愛着、③愛着対象の不機嫌を恐れた従順で迎合的な愛着、④情緒的な支持や保護という役割が親子で逆転している愛着、に分類できます。
(引用:障害臨床学ハンドブック第2版,p141より)
つまり、「選択的愛着を持たない障害=反応性愛着障害」で「安全基地行動の歪み=脱抑制型対人交流障害」だとするならば、前者は「愛着対象を持たない」、後者は「愛着対象を持つ」ということになり、両者の違いは「愛着対象を持つか持たないか」ということになるわけですね。
愛着スペクトラム
さて、ここまで「発達心理学的な観点」と「精神医学的な観点」の照合を行ってきたわけですが、最後に、ボリスさんとジーナーさんという方がこの2つの概念を統合し、愛着の適応レベルを表にしてくれているのでそれを確認してお別れです。
この表の見方としては、左にある矢印ほど「適応的」で右にある矢印ほど「不適応的」であることを意味します。そして、このエントリーでこれまで学んできた「反応性愛着障害」と「脱抑制型対人交流障害」に該当する箇所を以下の通り赤枠で示しました。
意外なことに、「愛着を持つ」方が「愛着を持たない」よりも不適応レベルが高いんですね。これは、俗に言う「毒親」ということに繋がってくるんでしょうか・・・・いやはや。
ちなみに、最も適応的なの「安定型」については言わずもがなですが、最も不適応的なのは、「誰にも愛着を示さない」という部分ですね。これは、「反応性愛着障害(愛着を持たない)」と何が違うの?と思うかもしれませんが、「中断された愛着障害」がここに該当すると思われます。
「中断された愛着障害」は死別や離別などで愛着対象を突然失った子供に適用されるもので、抗議・絶望・離脱という過程を含んでいます。愛着障害というより、対象喪失の範疇と考えられます。
(引用:障害臨床学ハンドブック第2版,p141より)
参考書
①障害臨床学ハンドブック第2版
②DSM-5精神疾患の分類と診断の手引
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