【勉強】躁病エピソードの診断基準〜項目B〜

DSM-5

こんにちは。

こちらの記事では、双極性障がいに関する僕の理解をまとめています。

完全に勉強用の忘備録ですのでその点をご了承ください。

前回のエントリーでは、「躁病エピソードの診断基準A」についてまとめましたが、今回は・・・

躁病エピソードの診断基準Bを深掘りしていきます。

DSM-5における躁病エピソードの項目B

DSM-5には項目Bは次の通りです。

B.気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)(気分が易怒性のみの場合は4つ)が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。

1)自尊心の肥大、または誇大

2)睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)

3)普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感

4)観念奔走、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験

5)注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないまたは関係のない外的刺激によって他に転じる)が報告される。または観察される。

6)目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動焦燥(すなわち、無意味な日目標志向性の活動)

7)困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、または馬鹿げた事業への投資などに専念すること)

(引用:DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き)

⬆️こちらの診断基準における項目Bを読み解いていきたいと思います。

で、さっそく最初に不可解な記述がありますね。「以下の症状のうち3つ、気分が易怒性の場合は4つ」という部分です。これは、双極性障害には、基本症状と周辺症状があることを示しています。

以下のように、体系図にするとわかりやすいです。

ですから、双極性障害には、「基本症状と周辺症状がある」ことを理解した上で、 DSM-5に書かれた「A」の文言をもう一度みると更に理解が進みます。

「A.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した活動または活力がある」

(引用:DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き)

つまり、項目Aは双極性障害の基本症状を示し、その基本症状を分解すると以下の3つ要素があると言えます。

  1. 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的な症状
  2. 気分が異常かつ持続的に高揚し、易怒的な症状
  3. 異常かつ持続的に亢進した活動または活力のある症状

そして、項目Bにおいて「以下の症状のうち3つ、気分が易怒性の場合は4つ」という表現があるということは、躁病エピソードにおいて項目Aの基本症状は、必ずしも3つ揃っているわけではないということがわかります。では、どういうパターンがあるかというと、以下の3パターンだと考えられます。

  1. 開放的な症状+活動性の亢進
  2. 易怒的な症状+活動性の亢進
  3. 開放的な症状+易怒的な症状+活動性の亢進

まず、「開放的または易怒的」という部分は、「気分が異常かつ持続的に高揚」した結果、どうなるか?という話をしていると推察されます。つまり、それは「気分が高揚した結果の分岐」であり、「開放的か易怒的」のどちらか1つの場合もあれば、2つ揃ってる場合もあるのだと考えられます。

ということは、この部分をよりわかりやすく記述するのであれば、「気分が開放的の場合は、3つ、気分が易怒性の場合は4つ、気分が易怒性と開放性の場合も4つ」項目Bの中の症状に当てはまれば、基準を満たすということになるのだろう。

というのが、僕のここまでの理解です。

それをまとめたの⬇︎こちらの図。


したがって、双極性障がいを理解しようとするためには、まず躁状態が「開放性」と「易怒性」どちらなのか?あるいは「開放性と易怒性」どちらもみられるのかという視点は大事なのではないでしょうか。

項目Bの症状を細かくみていく

それでは、項目Bに話を戻します。

以下は、各症状についてわかりやすくまとめられていたので、引用させていただきました。

自尊心の肥大:何でもできるような気持ちになる

誇大妄想:自分は特別だという根拠のない思い込み

観念奔逸:次々とアイデアが出てきて、話がまとまらない

注意散漫:外からの刺激に気を取られてしまう

焦燥感:落ち着きのなさや焦りがみられる

多弁:人が話すのをさえぎって話す

行為心迫:何か行動をしなければいられなくなる

社交性の増加:友人や見知らぬ他人と交流をとろうとする

浪費:不要なものに大金を使ってしまう

性欲の亢進:普段にはみられない性的な乱れがある

睡眠欲求の減少:睡眠をとらなくても疲れを感じない

(引用:元住吉こころみクリニックホームページより)

ということで、DSM-5と⬆️の解説を参考にしながら、各症状を追ってみたいと思います。

自尊心の肥大と誇大妄想

「自尊心の肥大」と「誇大妄想」について、関西学院大学の博士論文によれば、以下のように示されています。

「自尊心の肥大あるいは誇大的思考:自分が誰よりも優れた人間に思えるなど自己評価が高まり、思考も誇大的な考え方につながる。その結果、現実不可能な計画を立てる」

(引用:双極性障害における「簡易な心理教育」の考案とその有用性に関する研究,p10より)

例えば、双極Ⅱ型の人で、普段は自慢話なんてしないような人が、積極的に自慢話をし始めたりっていうことがあったのですが今思えば、あれば「自己評価が高まり」という文言に合致していたのかもしれません。

睡眠欲求の減少

睡眠欲求の減少については、躁状態の前触れみたいなものの手がかりになったりもするようですよ。

「睡眠欲求の減少:睡眠時間が短すぎる状態であっても、すっきりした気分で目覚め本人は睡眠が不足しているとは思っていない」

引用:双極性障害における「簡易な心理教育」の考案とその有用性に関する研究,p10より

これはまあ、僕からするとなんか羨ましいと思ってしまう部分もあったりするんですけど、まあ当事者にしてみれば苦しいわけです。

「双極性障害において睡眠障害が高頻度に認められることは古くから知られており、うつ病相における過眠は23-78%、不眠は100%、躁病相における睡眠欲求の減少は69-99%と報告されている」

引用:アンチグラフィを用いた双極性障害における概日リズムに関する研究,p1より

⬆️こちらによると、まあ、睡眠欲求の減少は2人に1人の割合で起きてるわけなので、診断基準に入ってくるのも納得ですね。

また、⬇︎こんなこともわかっているようです。

「寛解期をはさまずに躁状態とうつ状態を繰り返すような急速交代型において,うつ転に先行して睡眠時間の著しい延長が認められ,躁転に先行して睡眠時間の著しい短縮がみられることかが報告されている」

引用:精神疾患にみられる不眠と過眠への対応,p901より

だとすると、睡眠時間の変化を気にしておくことは、当事者にしろ、その人に関わる側にしろ、結構大事なことなんですね。

観念奔逸と多弁

では、次に、多弁と観念奔逸について少し掘っておきます。

観念奔逸は思考の形式の異常における、思路障害のうちの1つという位置付けのようです。

アイデアがとまらなくなるというやつですね。

で、DSM-5では項目Bのうち、観念奔逸と多弁が別々にあることを考えると、これらは必ずしもセットで現れるわけではないということでしょうが、以下の説明などを参考にするとおそらく観念奔逸の後には、多弁が続くのでしょう。

まあ、人間冷静な時でも、なんかいいアイデア思いついたら、話したくなりますし、お酒飲んでる時にも口数が増えるのもやっぱり観念奔逸が背景にあるからでしょうかね。

そう思うとなんか納得です。

「そのときの思いつき、連想、その場の出来事などに思考が容易に影響され、思考の定義にもあった「一定の状態に達」することができなくなります。話したいという強い欲求(談話心迫)も合わさり、多弁になります」

(引用:新宿ペリカンこころクリニックホームページより)

目標志向性の活動と精神運動焦燥

最後に、目標志向性の活動と精神運動焦燥について深掘りしておきます。

まず、目標指向性の活動という項目に関しては、具体例が書かれている論文や参考書がみつかりませんでしたが、わかりやすくいうと、「目標に向かって頑張りすぎる」っていうことみたいです。

「6)  目標指向性のある行動が高まる、あるいは精神運動性の焦燥:対人面を中心として、性的、職業的、宗教的、政治的な目的をもった計画や行動が増加 する。時に、足踏みを頻回にする、手をよじるなど、内的な緊張感と連動した活動性の亢進を呈することがある」

引用:双極性障害における「簡易な心理教育」の考案とその有用性に関する研究,p10より)

そして、「精神運動性の焦燥」についてですが、これは、「意欲」という観点から捉える考え方があるようです。

「意欲という面で考えれば、意欲が昴進すると、精神運動性興奮を呈する。意欲が低下すると精神運動性制止を呈し、意欲減退hypobuliaさらには無為buliaになる」

(引用:精神・心理症状学ハンドブック,p170より)

なので、「意欲が強まった状態=躁(軽躁)状態」と考えると、なんか「頑張りすぎる」という表現にも納得いく気がします。

この意欲の低下が顕著になったものが、「昏迷」という状態のようです。

ですから、躁病エピソードの場合は、それとは逆に「意欲が高まってしまった状態」が目標指向性の活動と関係していると考えると良いのかもしれませんね。

まとめ

最後に、今回のおさらいをしておわかれです。

  • 双極性障害の症状には、基本症状と周辺症状がある
  • 躁病エピソードの診断基準Bは、主に周辺症状のことについて
  • 気分が開放的の場合は、3つ、気分が易怒性の場合は4つ、気分が易怒性と開放性の場合も4つ、項目Bの症状に該当するものがあれば診断基準を満たすと考えられる

と、ざっくりこなんな感じでしょうか。

躁病エピソードの項目C&Dについて勉強したい方は⬇︎から

引用文献

引用した書籍や文献はこちらに残しておきます。

①DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き

②精神・心理症状学ハンドブック

元住吉こころみクリニックホームページ

双極性障害における「簡易な心理教育」の考案とその有用性に関する研究

アンチグラフィを用いた双極性障害における概日リズムに関する研究

精神疾患にみられる不眠と過眠への対応

新宿ペリカンこころクリニックホームページ

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