こんにちは。
こちらの記事では、双極性障がいに関する僕の理解をまとめています。
これまでは、躁病エピソードについてまとめてきましたが、本記事では「うつ病エピソード」についての学習を進めていきます。
DSM-5におけるうつ病エピソードの診断基準について
双極性障害と診断されるためには、「うつ状態」は必須でない。という話は衝撃でしたが、一応「うつ状態」についても確認しておきます。
僕が知る限り、「躁状態(軽躁状態)のみの人」に会ったことがないので。
⬇︎こちらがDSM-5における抑うつエピソードの主症状の部分です。
A.以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。
(1)その人自身の言葉(例:悲しみ、空虚感、または絶望感を感じる)か、他者の観察(例:涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分(注:子どもや青年では易怒的な気分もありうる)
(2)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退
(引用:DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き,pp68-69)
双極Ⅰ型とⅡ型において、躁的な状態には違いがありますが、うつ状態には大きな違いはないとされます。
そして、うつ状態というのは、抑うつ気分、そして興味・喜びの喪失、この2つの症状が中核症状とされています。
抑うつ気分
ではまず抑うつ気分から理解を深めていくことにします。
「典型的な抑うつ気分とは、親しい人を亡くしたときの辛さ、嫌なことがあった時に感じる悲しさといったものとは全く別ものです。それよりももっと辛い、形容し難い嫌な気分が、逃れようもなく、一日中、そして何日も続くというものです。抑うつ気分とは、あるべき意欲がないというものではなく、普段あるはずのない、筆舌に尽くしがたいうっとうしい気持ちが襲ってくる、というようなものです。
(引用:双極性障害 第2版 双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療,p32)
これが「抑うつ気分」なんだそうです。
「うつ病経験のある人」にこの「抑うつ気分」について尋ねると、「出口のないトンネル」とか「迫ってくる壁」とか「説明できない感覚」とか様々な表現をされます。
つまり、こういった表現こそが「うつ病に特有の感覚」ではないかと思うのですが、多くの人はそんな経験がない上に、「うつ病」の人たちも職場でそんな表現はせず、「しんどい」とかそんな感じでしょうから、そんな言葉を同僚や上司が聞いて「甘えでは?」と思っても仕方がないかもしれません。
興味・喜びの喪失
続いては、興味・喜びの喪失についてです。
これは正確に描写すると、「興味の喪失」と「喜びの喪失」ということになると考えら得れます。
まず、「興味の喪失」ですが、
「興味喪失とは、すべてのことに関して全く興味を持てなくなる症状を言います。ふだんなら非常に興味を持っていたことにも、関心が持てなくなってしまいます。たとえば、やり甲斐を感じていた仕事に、全くやる気がでなくなります。毎朝、新聞やテレビなどで、世の中の出来事を把握していた人がそういったことすべてに興味をなくし、ニュースに全く無関心になってしまいます。」
(引用:双極性障害 第2版 双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療,pp33-34)
僕自身の印象ですが、「うつ病」になった人の共通点として、「身だしなみ」に一切の興味が失われるということがあります。
例えば、「服装」ということもそうですが、「入浴」を一切しなくなるようです。女性でもです。
休職中の人に関していえば、まあ人に会わなければそうかもしれませんが、「過去にそんなことはなかった」という人でも「そういう状態」になるらしいので、これもやはり「うつ病に特有」なものだということになるのでしょう。
喜びの喪失
次に、「喜びの喪失」についてです。
「喜びの喪失というのは、普段なら楽しめていたことが、全く楽しめなくなってしまう症状を言います。何をしても、何を見ても、嬉しい楽しいという感情が全く湧いてくることがなく、砂漠のように味気ない荒涼とした気分が続きます。これには性的な喜びを得られないということも含まれます。」
(引用:双極性障害 第2版 双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療,p34)
これは僕自身も、思い当たることがあるのですが、会社員として営業数字を追われまくっていたとき、何をしても楽しくないし、気持ちくない、むしろ苦痛みたいな状態になりました。
漫画やT Vも楽しくない、食事をしても味はするけどうまいと思えない、美容院でマッサージしてもらうのもなんか辛い、そんな状態でしたね。
その時点では、いろいろ活動はしていたので「興味」はあったのだと思います。
ただ、「あれ」が長期に渡って持続すると「興味の喪失」に繋がっていたのではないかと。
あくまで僕の場合ですし、想像でしかありませんが、何をやっても得られるはず、過去に得られたはずの「楽しさ」や「嬉しさ」が得られない(喜びの喪失)状態が続くと、何をしようともしたいとも思えなくなる(興味の喪失)状態になり、さらにそのような状態が続くと、いよいよ「抑うつ気分」に変化していくのではないかという気がします。
これはオペラント条件づけによっても説明できます。僕らが漫画やTVをみるという行動は、「おもしろい」と思う感情によって強化されます。
しかし、それがなくなれば、そこへの「興味・関心」が失われたとしても、それは人間の特性上なんら不思議なことではありません。
つまり、世の中に「強化子」が一切なくなっていった状態です。それはまあ辛いことでしょう。
わかりやすい症状とわかりにくい症状
それと、うつ症状についてわかりやすく説明してる論文をみつけたので、そちらも合わせて紹介しておきます。
そちらの論文にあった「気が滅入る、悲しい」「あとにひきずる」「興味が湧いてこない」という症状がおそらくここでいう、抑うつ気分と、興味・喜びの喪失に繋がっていると考えられます。
気が滅入る、悲しい
こちらは、抑うつ気分をもう少し具体的にした症状ではないかと思われます。
憂うつ,悲哀,孤立.つまり,気が滅入って, 落ち込んで,悲しい気分になる.まわりからはなれて,独りぼっちになったような感じがしてくる.そうして,徒労,悲観,絶望.つまり,孤立無縁な状況のなかで,負け戦にいつの まにか巻き込まれていく.もはや,自分の力だけではどうしようもない.いくらがんばってみても無駄なのだ, なにをやっても徒労に終わる,そんな無力感に次第にさいなまれていく.
引用:うつ病の症状,順天堂医学,51巻3号(2005),p379より
先ほど引用した抑うつ気分では「形容し難い嫌な気分」という表現がありましたが、その気分を構成する要素の1つがこちらなのでしょう。
また、「出口のないトンネル」という表現も、ここで言われている「孤立」や「絶望」に繋がっているような印象を受けました。
あとにひきずる
続いては、うつ病の時間認識の概念について書かれています。
うつ病になると時間認識が変わってしまう. 普通,私たちは,過去と未来とを均等に,いや, どちらかというと前を向いて,後ろはそれほど気にかけない.前7割,後ろ3割くらいの配分で,そういった前向きの姿勢で,時間の歩みをとらえている.それが,うつ病になると逆になる.前が縮こまって,後ろ優位になる.後悔ばかりで,未来をめざして前向きに生きていこうという気がすっかり萎えてしまう.こうして,時間は,前3割,後ろ7割 のような,未来への向きようと過去への向きようとが逆転してしまう.そ うなると,些細なことを「あとにひきずる」ようになる.
引用:うつ病の症状,順天堂医学,51巻3号(2005),p379より
僕は、この文章を読んだ時に、「反芻」が思い浮かんだのですが、どうなんでしょう。
ちなみに、就労移行支援や心療内科で、うつ病の当事者と接すると、実際にこのような傾向はよくみられるので、実体験とも合致しています。
で、ひきずる内容として、やはり「家族からの一言」を多くひきずる人が多い気がします。
それもそのはずなんですよね、だって療養中って一番お世話になるのが家族なので。
ですけど、まあ、療養期間が長くなると、家族のストレスも溜まってきますから、気持ちはわからなくはないですが、うつ病の人の治療のためにも、家族へのケアが大事なんだなとよく考えさせられます。
興味が湧いてこない
最後は、興味・喜びの喪失に該当する部分です。
まわりの人が気付く症状もある.まず,本人が好きだったこと,興味をもっていたことに,関心がいかなくなる.習慣になっていたことすら,できなくなる.(中略)夜遅く帰ってくれば,一風呂浴びて,ビールを飲みながら,スポーツニュースを見て,今日のナイターの結果をチェックするのが日課である.(中略)本当はナイターなんか興味ない妻が,気になって, ためしに,「あなた,巨人が負けたそうよ」と言ってみると,「あっ,そう」と気のない返事が返るばかり.(中略)子供の頃からの巨人ファンにとっては,まるで無関心ではいられないはずである.それでも,うつ病になってしまうと,こういうことに関心がなくなってしまう.
引用:うつ病の症状,順天堂医学,51巻3号(2005),pp380-381より
この症状を周囲の人間が見極めるためには、「これまで興味を持っていたことにも、関心がなくなってる」というところでしょうか。
この点については、心療内科にくる人は見受けられますが、就労移行支援に来てる人だとそんなにわからないですね。
寛解扱いってことになるからですかね?
以前、U-NEXTでうつ病九段というプロの将棋棋士がうつ病になるという、ノンフィクションドラマを観た時に、将棋ができなくなるという事態に陥ってましたが、あれは興味の喪失とはまた違うんでしょうかね?
将棋に向き合おうとするけど、「手が思いつかない」ということだったので、興味はあるということになるのでしょうか。
そうすると、喜びの喪失?
それとも、また、別の症状からきてるものでしょうか?
難しいですね。
うつ病の理解のためのイメージ作りに役立つのでぜひ参考になるので参考にしてみてください。
僕は⬇︎こちらの31日無料キャンペーンを活用して「ツレ鬱」とセットで視聴しました。
まとめ
それでは最後に今回のまとめをしておわかれです。
- 抑うつエピソードには2つの中核症状がある。
- 1つは、抑うつ気分。もう1つは、興味・喜びの喪失。
それではまた。
うつ病エピソードの周辺症状(抑うつ気分と興味・喜びの喪失以外の症状)について知りたい方は⬇︎こちらから
この記事を書くためにお世話になった教材
参考にした書籍や文献はこちらに残しておきます。
①DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き
②双極性障害第2版
③第16回都民公開講座《現代の病:「うつ病」と「もの忘れ」》 うつ病の症状(論文)
④U-NEXT31日間無料トライアル
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