こんにちは。
クリタマです。
この記事は、うつ病にみられる3つの妄想である、貧困・心気・罪業妄想について理解を深めるため内容になっています。
僕と同じくして、クリニックや就労移行支援で働いているクリタマ の皆さんの学習のお役に立てば幸いです。
うつ病の妄想とは
そもそも、うつ病にも「妄想」がみられるというのは、僕の中で新たな学びだったのですが、その理由としてどうやらうつ病の妄想を判別しづらいということがあるようです。
「実際にうつ病の方を前にして、患者さんが妄想にとらわれていても、それが妄想である、となかなか気づけないこともあるかもしれません。例えば、重いうつ状態の方ですと、いくら、『うつ病です。うつ病は必ず治ります』と言っても、そんなはずはない、自分の病気は治らない、と言い張り、治療を拒む場合があります。これも心気妄想と言って良い。」
(引用:双極性障害 第2版 双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療,p39)
ですので、うつ病の人の妄想を理解するためには、どのような妄想があって、それぞれの妄想の特徴を知る必要があるということになります。
ということで、以下にうつ病にみられる3つの妄想をまとめておきました。
「抑うつ気分が基礎になって罪業感や心気、貧困、微小念慮が生じ、自殺企図のみられることもある。時には離人症状や強迫観念を伴ったり、心気妄想や臓器否定妄想(コタール症候群 ssndrome de Cotard)のかたちをとることがある」
(引用:必修 精神医学,p44より)
また、「妄想」と聞くと、最初に頭に思い浮かぶのが、何となく「統合失調症」なわけですが。「妄想」は統合失調症に特有な症状ではないそうです。
これも大事なことですね。
「被害妄想がうつ状態の時に出ることもありますが、これは先ほど述べたような、うつ状態に特徴的な妄想には含まれません。なぜなら被害妄想は、疾患特異性がなく、うつ状態でも、統合失調症でも、アルコールや覚醒剤でも、認知症でも出ることがあるからです」
(引用:双極性障害 第2版 双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療,p39)
この辺の関連の問題は、臨床心理士の資格試験の問題でも出されるようなので、しっかり抑えておいた方がよさそうです。
それでは、ここからは、3つの妄想(貧困・心気・罪業)について、それぞれの詳細を1つずつ確認していきます。
貧困妄想とは
まずは、貧困妄想です。
「根拠もないのに破産した、お金がない、などと信じこんでしまう妄想です。この妄想のため、入院を勧めても「お金がないから・・・」と断る人もいます。借金をしていないのに、借金取りがくることなどをひどく心配してしまう人もいます。
(引用:双極性障害 第2版 双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療,p37)
ちなみに、他の論文もあたってみたので、以下を引用します。
「入院4日目位から、前述の訴えに加えて、 「お金がないのに入院して家族に迷惑をかけている。」といった貧困妄想、「警察に追われている。」「あの患者のことを警察だと思う。」といった関係妄想を訴えていた。」
(引用:自殺企図をおこした患者への看護を振り返って,p43より)
このケースでは、「関係妄想」もみられているようです。これは加藤先生が述べていた「被害妄想」は「疾患特異性がない」という部分に一致します。なぜなら、「関係妄想」は「被害妄想」の下位カテゴリーなので。
心気妄想
続いては、心気妄想です。
「自分が重い病気にかかったと信じ込んでしまう妄想です。不治の病にかかった、癌にかかったなどと思い込み、医師や周囲の人が、そんな事実はないといくら説明しても、その言葉を信じることができません。なお自分には腸がないなどと訴える人もいます。このように内臓がなくなってしまうという否定妄想に加え、自分は大変な病気にかかり死ぬこともできず、永遠に生きなければいけないという不死妄想が見られる場合をコタール症候群と言います」
(引用:双極性障害 第2版 双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療,p37)
こちらも、この「コタール症候群」および、心気妄想、否定妄想、不死妄想の具体例がみたかったので、論文をあたってみました。
その結果、心気妄想は良さそうな文献がなかったのですが、コタール症候群と否定妄想および不死妄想の理解のためには、良い文献があったため、以下を引用します。
「1874年、パリ郊外の精神病院に 『自分は永遠に死ぬことがない』と訴える一人の女性が入院してきた。(中略)患者は永遠に死ぬことができぬと述べた他に、『火で焼かれでもしない限り自分は永久に生き続ける』、『生きるために食べる必要もなく自然な死を迎えることができない』とも述べた、さらに、このような不死妄想に加えて、自己や外界に関する次のような虚無的な内容からなる否定妄想を訴えた。すなわち、患者は『自分には脳も神経も肺も腸もなく、瓦解した肉体は骨と皮だけだ』と身体の非存在を嘆き、また、『自分の感情はなく、もはやなにも愛することができず、祈ることも神の善を疑うこともできなくなった』と、精神の絶望的な非存在を嘆いた。(中略)このような不死妄想と一連の否定妄想からなる病像は、Cotardの死後に彼の名をとってコタール症候群として呼ばれるようになり、世界中の精神科医が知るところとなった。
(引用;死が照らし出す生の意義と時間の形而上学ー不死を妄想主題とするコタール症候群が示すものー,p188)
ということです。
この「うつ病と診断された人」の中には、この「コタール症候群」が重複してみられる場合があるということなのでしょうね。
罪業妄想
最後が、罪業妄想です。
「自分はとても罪深い人間なので、罰せられなければならない、と思い込んでしまう妄想です。何もしていないのに、自分は大変な罪を犯したので死刑になる、警察の人が来て自分を収監しようとしている、と信じていたり、子どもに何一つしてやることができなかった、と自分を責めたりしている人などは、この罪業妄想に当てはまります。」
(引用:双極性障害 第2版 双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療,p38)
また、こちらの論文も引用させていただきましょう。
「入院時、抑うつ気分は目だたないが焦燥感が非常に強く、さらに『自分は医者ではなかったが医療行為をしてきたので罰せられる』『テレビはビデオが流されており時間を混乱させられている』『破産してお金がなくなったので入院費が払えない』等の罪業妄想、被害関係妄想、貧困妄想が強く、当初は妻と共に個室での生活とした」
(引用:Bromperidolが速効性を示した妄想型うつ病の2例,p120より)
なるほど、この「医者でないのに医療行為」というのもまた罪業妄想ということなんですね。
こういう事例を扱った論文を読むのは本当に勉強になります。ありがたいですね。
それと、この事例は、「焦燥感が強く」と書かれていることから、精神運動焦燥があらわれていた状態なんでしょうかね?
その点が疑問です。
うつ病にみられる「妄想」の種類の位置づけ
さて、ここまでは、うつ病によくみられるという「妄想」にフォーカスしてきましたが、これらの妄想は「微小妄想」と言われる妄想の下位分類に該当すると考えられます。
以下の体型図は、僕の理解をまとめたものです。
ちなみに、論文で出てきた「関係妄想」は「被害妄想」の下位カテゴリーに属しますから、うつ病といえど、本当に人によっていろんな妄想があるのでしょうね。
ただ、否定妄想って心気妄想の下位分類なのかな?と思ってたんですが、どうなんでしょうね。その辺だけ、理解が曖昧です。
ちなみに、加藤先生はうつ状態に「幻聴」もみられるとのことです。
「またうつ状態でも、幻聴が出てくることがあります。『おまえはもう死ぬのだ』など貧困妄想、心気妄想、罪業妄想に関連した内容の幻聴が多く見られます。」
(引用:双極性障害 第2版 双極症Ⅰ型・Ⅱ型への対処と治療,p39)
そうすると、思考の障害に加えて、知覚の障害もあるということになりますよね?
確か、幻聴は、知覚の障害からくる症状だった気がしますが・・・
その辺は、もう少し勉強しておきたいと思います。
まとめ
それはで、本記事の内容を簡単にまとめてお別れです。
- うつ病にみられる妄想には、貧困妄想・罪業妄想・心気妄想の3つがある。
- 貧困妄想は、そんな事実や根拠がないのに、「お金がない」と信じ込んでしまう妄想
- 罪業妄想は、何もしてないのに、悪いことをしたと思い込んでしまう妄想
- 心気妄想は、否定妄想と不死妄想の2つがあり、この2つの妄想があるとコタール症候群と呼ぶ
- 否定妄想は、自分には臓器がないなどと訴える妄想
- 不死妄想は、自分は死ぬことができないと訴える妄想
引用文献
最後に、この記事を書くにあたって、引用した文献をこちらに残しておきます。
②Bromperidolが速効性を示した妄想型うつ病の2例(論文)
③死が照らし出す生の意義と時間の形而上学ー不死を妄想主題とするコタール症候群が示すもの(論文)
④双極性障害
⑤必修 精神医学
※書籍がネット上でみつかり次第こちらに掲載しておきます。
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